685人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「ん……ん……んんっ」
瞬はふとんに膝をついて、伸幸と深いキスをしていた。
のどが鳴る。
のどが甘い声を漏らすたびに、自分の腰が揺れる。膝が崩れそうになる。
伸幸は瞬と舌をからめながら、瞬の背に指をはわせた。指は瞬の秘密の場所に到達した。
「んっ!」
伸幸は焦らすようにそこを外から撫でた。瞬の腰はビクンと跳ねた。
「瞬……もう少し膝を空けて」
瞬の唇を離した伸幸が、低い声でささやいた。瞬は言われたとおりに脚を開いた。
潤滑剤にまみれた指がぬるぬると瞬の秘密を暴いていく。伸幸は秘密の入り口を、口笛を吹くように軽く刺激した。
「んん……」
瞬が好きに動けるように、伸幸は瞬を立ち膝にさせていた。瞬は甘い刺激に伸幸の首に腕を回した。そのまま甘えるように頬をつける。熱した伸幸の肌の匂いがした。
入り口を堪能した伸幸の指は、少しずつその奥へ侵入する。焦れったくて、瞬は自ら迎えにいった。わずかな距離で腰を落とし、伸幸の指先を欲しい位置まで吸いこんだ。
「ここが好きなの?」
「ああっ」
「可愛いね」
「あ……んっ」
嬉しそうな伸幸の声は甘くかすれて、瞬の耳をくすぐる。伸幸によって鳴らされる瞬の叫びも、伸幸の耳許で甘くもれる。
「伸幸さん……」
「ん? 瞬、何?」
伸幸の指は情熱的に瞬を愛していた。瞬はその動きに耐えられず、余計な肉のない細い腰をヒクつかせた。
「お願い……」
瞬は小さな声で伸幸の耳にせがんだ。
「何? 瞬は、どうして欲しい?」
伸幸の声は笑いを含んで甘い。
伸幸は瞬が何を欲しがってるか知っている。
知っているのに、瞬が自らそれをねだらないと与えない積もりだ。瞬にはそれが分かっていた。
欲望に、脳が、灼ききれる。
「もっとちょうだい」
瞬の腰が大きくうねった。
「のぶゆきさんのゆび、もっとぉ」
伸幸はのどでくくと笑った。
「足りないの?」
「ん……」
幼児のように舌足らずな答えをしながら、瞬は腰をくねらせ、太ももをふるわせて、伸幸を求めていた。
「いいよ。瞬が欲しいだけあげる。ほら」
「あんっ」
瞬は片腕を伸幸の首から外し、そろそろと伸幸の脇を伝って下へ下ろした。伸幸に与えられる感覚に数秒ごとに動きを止めながら、求めるゴールへたどりついた。
「ふ……っ」
伸幸ののどからも快楽のため息がもれる。瞬の手が伸幸の欲望を布の上からきゅっとつかんだのだ。
伸幸の指と、瞬の指とが、互いに互いの温度を上げていく。
「瞬……」
「ん……」
「欲しい? これ」
瞬は自分の顎を伸幸の肩から離し、伸幸の瞳をのぞきこんだ。
「伸幸さんは?」
「ん?」
「……俺が、欲しい?」
「瞬?」
瞬は唇で伸幸の下唇を一瞬はさんだ。
「俺の中で感じたいの?」
伸幸はまたくすりと笑った。
「うん。瞬が欲しい。入れたい。瞬の中をぐちゅぐちゅとかき混ぜたい」
伸幸の方が一枚も二枚も上手だった。瞬はぎゅっとまぶたを閉じた。
「伸幸さぁん……俺の負け……もうダメ……」
「瞬?」
「……来て」
瞬にねだられた通り、伸幸は自らの欲望を瞬の秘密の奥へと進めた。
腰をつかまれ、伸幸に下からずんずんと突かれて、瞬は何度もけいれんした。
腰骨の内がわ全体がじんじんと痺れて、何が何だか分からない。
分かるのは、これが初めて経験する感覚だということ。
春に自分を捨てた「あいつ」との行為で、感じたことのない深い快楽だった。
繰り返し何度もけいれんするうち、瞬の頭の後ろの方に、チカチカと不思議な輝きが見えてきた。
「瞬……そんなにきもちいいの? 瞬……」
伸幸の声も欲望に熱くうわずっていた。
多分、自分ののどは、甘く叫びつづけている。さっきけいれんしたときからずっと。
「瞬……かわいい……」
大きな、何か。
波が。
やってくる。
瞬の意識は数秒飛んだ。
「きもち……よかったね」
伸幸は瞬の頭をなでた。
「のぶゆきさん……」
全身に力が入らない。瞬は気だるくまばたきした。
「びっくりした?」
伸幸はタオルで瞬の身体にまとう汗を拭いてくれた。瞬は素直にうなずいた。
「うん。はじめて、だった」
「そうか」
伸幸は嬉しそうだ。
「暑いな。水シャワーでも浴びるかな」
伸幸はニコニコと瞬を誘った。
「一緒に入る?」
瞬は「狭いよ」と呟いた。
「だからいいんじゃない。体温があれば冷えすぎないでしょ」
そういうものだろうか。
いぶかしがりながら、瞬はうなずいた。
伸幸は喜んで瞬を抱きおこした。
ザーザーとぬるいシャワーの雨に打たれて。
シャワーの下で抱きあってキスをした。
石けんの泡で摩擦がなくなったふたつの身体は、抱きしめてもつるりとすべって、逃げたり逃げられたり、つかまえられたりつまかえたり。
小さな子供のようにふたりは濡れながら遊んでいた。
伸幸はずっと楽しそうに、幸せそうに笑っていた。
人間は相手の表情をそのまま写しかえすという。
なら。
瞬もそんな表情をしているのだろうか。
長く愛しあったほてりが冷め、伸幸はシャワーを止めた。
瞬はバスタブに立ったまま、伸幸にバスタオルごと抱きしめられた。
(しあわせ……だ……)
瞬は瞼を閉じて、かいがいしく瞬の身体の水分を拭きとる伸幸の肩にもたれかかった。
ついに。
また、堕ちてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!