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胸が大きい女は頭が悪いと言う奴は、胸が小さくて嫉妬深くて僻んでしまう女か、或いは大きい胸をセックスアピールと捉え、性欲が強そうに感じ、勉強の方に頭が回らないと考える男かのどっちかではないかと大概、そんな所かなと僕は思う。
僕が舞子に惹かれた要因は、大きな胸であるのは確かだが、彼女は決して馬鹿ではないものの馬鹿正直なところがある。例えば、僕を好きになった理由として第一に遺産相続が目的なのと言わんばかりに資産家の息子であることを挙げている。言わずもがな金持ちが大好きなのである。第二に私カッコいい男に犯されたいのと言わんばかりに三高を備えたイケメンであることを挙げている。つまり僕がカッコいい男の範疇に入っていて僕とエッチするのが大好きなのである。あと第三には私、気前がいい人が大好きなのと言わんばかりに高価なアクセサリーで飾り立ててくれることを挙げている。食事するにも宿泊するにも五つ星の所じゃなきゃやだぁと言い、旅行で利用する乗り物も何でもファーストクラスじゃなきゃダメぇと言う。
悪く言えば、強欲で我儘、良く言えば、女の欲望をストレートに言える正直者、自分の思うが儘にさせてくれれば、とことん僕を愛してくれ、物凄いサービスをしてくれる。それはもう金をかけただけのことはあると思わせるに十分な極上のもので僕を大満足させてくれる。だから僕は幾ら強欲でも我儘でも舞子を嫌いにならないのだが、お袋がどうにも舞子を気に入らなくて、あれは我が息子の身を破滅させるファムファタールだぐらいに考えていて親父はそんなでもないが、あんまりお袋が煩いから到頭、僕に良家の娘との縁談を持ちかけて来た。
相手の令嬢は礼子と言って舞子にも劣らぬ美人。親父は僕が胸が大きい子を好きなのを承知しているからだろう、礼子を選んだのは胸が大きいからというのもあるに違いなく、お見合い写真でそれと知れた。そして舞子と違って強欲でも我儘でもないと踏んだのだろう。
最初のお見合いは勿論初対面だったし、両家の両親も同席してのことだったから忌憚なく立ち入った話は出来ないだろうと思っていたが、礼子が僕の話に興味津々になったらしく、と言うか、僕を大いに気に入ったらしくアグレッシブに対応して親父から聞いて舞子の欠点を知っているものか、私は強欲でも我儘でもありませんからお金があんまりかかりませんわよと言わんばかりに自分を盛んに売り込んでアピールして僕にとって都合の良いように合わそうとした。
実際、付き合ってみると、確かに強欲でも我儘でもなく金がかからない。それに令嬢らしく物腰も仕草も上品でとてもいい子に思える上、これも親父から聞いて僕の好みを知っているものか、胸の大きさを強調したタイトな服を必ず身に付けて来るから、そこにも惹かれ、おまけに舞子に劣らぬルックスと来ているから僕は礼子に傾かない訳には行かなくなった。
舞子の出自が良家ではないこともあり、僕の両親は断然、礼子を選ぶべきだと僕に迫るし、僕としても金銭的に舞子より付き合いやすい礼子を選びたい気になって試みに彼女と初のエッチをしてみたが、彼女の胸を直に見た途端、憮然とし、まんまと瞞着されたと思った。なんとシリコン胸パッドで盛っていたのだ。だからブラを外した後、FカップからCカップくらいにランクダウンしたような代物を恥ずかしそうに両手で隠す礼子であったが、それがまた、何ともしおらしく愛おしく見え、舞子には感じられない控えめな奥床しさを全身から漲らせるようにも見えた僕は、これは嘉するべきことなのかなと思えた。
これも舞子とは対照的なことだが、礼子が昔ながらの女のように常に受け身であることが却って新鮮に感じた僕は、ハートに火がついて燃えに燃えてぐいぐい攻めた。しかし、それによって僕をゲットする自信を得てカムフラージュしたり猫を被ったりする必要性を感じなくなったらしい礼子は、付き合うごとに図々しくなって来て我儘も言うようになり、金がかかるようになってしまった。そしてエッチも大胆になって行った。そうなると、途端に僕は鼻白んで礼子に魅力を感じなくなり、舞子に傾くようになった。で、礼子に傾いていた時は、巧みに言い寄る礼子に胸同様騙されていたと悟るに至った僕は、巧詐は拙誠に如かずという韓非子の言葉を思い出し、巧詐を礼子に置き換え、拙誠を舞子に置き換えることが出来、サービス精神旺盛で少々露骨なものの一切隠し立てのない正直な舞子に真の愛を感じ、俄然、舞子を選ぶ気になったが、両親が反対するに違いない。ま、結婚相手を親が決める時代じゃあるまいし、親と住む訳じゃないし、そんなことは何とかなる。
それは兎も角、高級ホテルのラウンジで食事を取っている時、テーブルに片肘をついて繊手の指先を鎖骨辺りに添えて、そっちに少し首を傾けながら笑いかける舞子がまた可愛くて、部屋に戻って来てシャワーを浴びた後、バスタオル一枚だけ纏い、ベッドの縁に座ってワインを傾ける舞子がまた色っぽくて、本当にこの子と過ごしている時が至幸だ。僕はもう絶対に礼子と付き合う前に交わした約束を破らないぞと決意した。それは即ち結婚である。
「僕、見合い話、親から持ち掛けられちゃったんだけど、勿論、断ることにしたよ」
「えっ、相手はどんな女?」
「両家の令嬢だよ。だから親は政略結婚させたかったんだろうけど、これを断ったからには勘当と行かないまでも遺産相続の時に不利になるかもね」
「そうなると分かっていながら私を選んでくれたのね。私、とっても嬉しい!益々あなたを愛しちゃう!」と言って舞子はもう絶対放さないと言わんばかりに僕に抱き着いて来た。だから僕は舞子を見直して益々好きになり、二者択一に於いて間違いがなかったと確信するのだった。
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