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【フランドール・グラエキア】
いろんなことが面倒になった俺は、ある日全てを諦めた。
いろんなことが続いて……人付き合いが心底鬱陶しくなったのだ。だから心機一転のために、大学生の特権もとい長期休暇を利用して一人旅に出ることにした。
俺は何をしたいのか、すべきなのか……俺自身の在り方を探すため、あるようでない目的のもと、あてどない一人旅の幕が上がるはずだった。
ところが乗り込んだ長距離バスが、旅先の地に着く前の高速道路で事故を起こしたことで幕は上がるどころか、あえなく下りることとなってしまった。
車内から放り出された俺は……気づけば高架下の河原に寝そべっていた。そして全身脱力し朦朧とするなかで、輝く星空を遠くに眺めながら、ある思いを抱くこととなる。
やり直せるなら、今度は同じ失敗はしないと。それから――
宿屋の食事場ですっかり回想に耽っていると、目の前の声が俺の意識をふと引き戻した。
「――ということだからな。そこまで過酷な場所にはならんだろうさ……はぁ、さっきから聞いているのかいミツキ。
あぁ、もしや食欲が無いのか? 君が要らぬなら、私が代わりに貰ってもいいがね」
そう言って、バーガンディのククルスのような外套の隙間から、華奢な白い手をチラッと差し出す金髪少女は自称魔王。名はフランだそうだ。
しかしその動きやすそうな膝丈のパンツにありふれたブーツなどの軽装を見た限り、ウィザード的な冒険者にしか思えなかった。杖なんて持たせたら、まさにそれだろう。
あとはそうだな……逃亡中のどこかの姫様って捉え方もできないわけじゃないが。
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