𝟘𝟞 見つめて、触って、心ざわめく

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モモちゃん、芯から真面目なんだよねえ。そんなところも好ましいんだけどさ。でも、自分の趣味の為にお金を使えるような余裕がでてきてくれたのは私も嬉しい。やっぱり高校生が家賃とか光熱費とか食費を気にして生活してるのは悲しいよ。切ないよ。 最初にきっちり約束したのに今でも何かとお金を出そうとしてくるし。いや、家事全般やって貰ってるんだからマジでいいのに。寧ろ助かりまくってるのに。どうしてかな、なかなか伝わらない。 うちにいる間だけでも〝普通〟の生活をして欲しい。 限界ギリギリまでバイトを詰め込まなくてもいいんだよ。放課後、友達と遊ぶ時間を大切にしていいんだよ。食べたいものを我慢しないで。飲みたいものを節約だって諦めないで。勉強だって、恋愛だって、好きにしたらいい。モモちゃんは、今、自由なんだから。 (ああ、それなのに、そう思うのに、なんでだろう。寂しいな) 欲張って欲しいと願うのに、欲張りになっているのは私の方だ。 『…………説明、してくれますよね?』 深く、暗く、複雑な思考の渦に呑み込まれそうになっていた私を掬い上げてくれたのは他でもないモモちゃんで。 『七生のムカつく顔とオーダー内容で気付くべきだった』 また、頬っぺたがむにむにと動いてしまう。 さらりと色っぽく流れる前髪で隠されたモモちゃんの表情は残念ながら読み取ることが出来なかったけれど。言葉尻の強さとは反対に、丁寧に、優しく。そっと置かれた私のサンドイッチとカフェオレ。扱い方が紳士のそれで、思わず羨望の眼差しを送る。 『アンタ、今朝もたまごサンド食ってただろ』 『んっふふ、そうなんだけどね~』 『……カフェオレも。飲んでたくせに』 『だってモモちゃ……百瀬くんのカフェオレ美味しいんだもん』
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