𝟘𝟙 炎上、援助、はじめまして

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「なぁにがAmicaさん目尻のシワやばくないですか?だよ!!」 ダン、とテーブルに叩きつけたビールジョッキから泡が飛び散る。 「言われなくてもわぁーかってるっつうの!こっちは生きてんだよ!シワも出来るしシミだって出来らぁ!だって人間だもの!!」 毒を吐いてもレスポンスは得られない。そりゃそうだ。幾ら私がスタイル抜群のゴージャス美人でも、空いたアルコールグラスの数を見りゃ大抵の人間は引く。そもそもボッチ飲みしてる時点で負け戦だ。別に、誰か引っ掛けようとかは思ってなかったけど。 でも、寂しくはなんじゃん。特にアルコールが回ってきたらさ。そう、いま、私は猛烈に寂しい。ボッチつらい。レスポンス欲しい。 「ちょっと若くてさぁー肌ピチピチだからって舐めてんじゃねえよ。おまえだって絶対そのうち肌の衰えくるかんな!タルむしハリ消えるし毛穴開くかんな!バーカ、バァーーカ!!」 苛立ちは最高潮。冷えただし巻き卵にぶすりと箸を突き刺す。 突き刺して、これは流石にお行儀が悪いしマナー違反かなと思い至り、慌てて口のなかに放り込んだ。もぐもぐごっくん。あらやだ美味しい。でき立てあつあつの時に食べておくんだったな。後悔。 「あーあ、私も冷えても美味しい奴だったら良かったのに」 はじまりは読モからだった。そこから人気が出て専属契約。某有名事務所とも契約を結び、まさに女の子憧れのシンデレラストーリー。私が表紙を飾ればその雑誌は飛ぶように売れたし、私が紹介したコスメや服、果ては雑貨類でさえも在庫を枯らすぐらい売れた。 ――(まき) 亜未夏(あみか)、Amicaの名前で一世を風靡した元カリスマモデル。 〝元〟なんてついているけど引退したわけじゃない。カリスマ力を失ったアラサーの落ち目モデルに降格しただけ。あー虚しい。 若手は放っておいてもうじゃうじゃ生えてくるし、ハーフモデルってカテゴリーは最早反則じゃん。遺伝子から違うっつうの。こちとら代々平たい顔族ぞ?おぉん?喧嘩売ってんのかコラ。買うぞ。
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