𝟘𝟙 炎上、援助、はじめまして

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「ううぅ、マネージャー連れてくれば良かった」 わかってるよ。アラサーのオバサンに需要がないことぐらい。今日の撮影でも身に染みて痛感しました。肌つやプルプルな十代のかわいこちゃんから頂いた悪意なき純粋な疑問。流石につらかった。 (もう、オシャレやメイクが好きってだけじゃ駄目なんだな) 潮時なのかもしれない。 良く言えば隠れ家的な。悪く言えば寂れた居酒屋の片隅で、ビールジョッキ片手に管を巻くアラサー女。字面を追うだけでも相当ヤバいのに、誰からも声を掛けて貰えないのはもっとヤバい。 いや、だからこの酒癖の悪さと口の悪さが原因でもあるんだろうけど。それを差し引いたってひどい。見た目だけは自信あったのに。 こうなったらヤケ酒だ。とことん呑んでやる。 「おとーさぁん!生中ひとつ追加で!あと唐揚げとポテサラも!」 「はいよ。お嬢さんかなり呑んでるけど平気かい?」 「へーきへーき、問題なぁ~い!」 「なら良いんだけどね。モモ、生中出してあげて。それと、もうすぐ時間だからそのまま上がっていいよ。お疲れさん」 「あ、いえ。サラダも作ります」 「モモは真面目だねえ、助かるよ」 「……そんなことないです」 「照れてるな?」 「照れてません!」 カウンター越しに聞こえてきた店主と従業員の敬愛と気安さを混ぜたテンポの良い掛け合い。店主も渋くて良い声だけど、若い子の方。語尾に少しだけ甘さを含んでて、耳障りが良いなって思った。 「お待たせしました、生中です。ポテサラもすぐにお持ちし――」
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