𝟘𝟙 炎上、援助、はじめまして

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キラキラ、ピカピカ、うるうる。 馴染みのネイリストさんオススメの新作デザイン。指先にだって気は抜かない。根元の伸びとか作ったことない。いつだって綺麗にしてる自慢の爪が食い込む白い肌。 「あの、痛いです」 「あっ!ごっ、ごめん!」 ほとんど無意識だった。男のくせに見事なブルベだな!とか、羨んだわけじゃない。決して。咄嗟にごめんとは言ったけど、掴んだままの手首からつうと視線を上に走らせる。ぐあ、顔も透明感バリバリ。悔しい。ふざけんな。男の子にも負けてるとかへこむやめて。 サラッサラの黒髪。透き通るような白い肌。涼しげな目元には濃いめの赤シャドウ塗ってやりたい。顔のパーツで一番重要な鼻も文句なしに綺麗な形、高さだし、程好い薄さの唇も映える。完璧かよ。 しかも〝モモ〟とか呼ばれてなかったか? 「ねえ、名前おしえて」 「は?」 「だぁーかーら!名前!おしえて!」 「うわ、めんどくせ」 「おい聞こえてんぞコラ」 「百瀬(ももせ)です」 「ふぅん、モモセって名前?」 「いえ、苗字です」 「じゃあ名前は?」 「………汐里(しおり)」 モモセシオリ――アイドルネームじゃん!!つうか露骨に嫌そうな顔してんなよな。接客もうちょいがんばって!まあウザイ絡み方してる自覚はあるけど。だから文句は言わない代わりに、もう少し。 「ねえねえ」 「今度はなんでしょう、オキャクサマ」 これ絶対「お客様は神様だ」とか思ってないタイプの店員だ。サイッコー。私もそういうの大っっっ嫌い。ゲロぶち撒けたくなる。 「ポテサラにソースかけて~」 「…ああ、かしこまりました。ウマイですよね。ソース」 「おっ、わっかる~?」 「はい。俺もその食べ方好きです」 すぐにお持ちしますねと淡く微笑(わら)って、無防備に細腰を晒す。クソ。抱きついてやろうか。ギャルソンエプロンの紐を後ろで結んでる男の子とかはじめて見たぞ。なんか、その、エッチだ。 「……え、やばくない?私の思考回路もやばくない?」 セクハラって捕まるんだっけ? こんなアホみたいなことを考えだした時点で倫理観とか理性とか諸々、既に飛びはじめてたんだと思う。はい、そうです。つまり。
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