𝟘𝟞 見つめて、触って、心ざわめく

3/25
前へ
/82ページ
次へ
「っ、わあ……」 感嘆の声が漏れた。 外も華やかだったけど校内はもっとすごい。壁一面にはそれぞれに工夫された宣伝ポスター。製作過程の仲睦まじい楽しげな写真。教室全体を使ってのお店はどこも本格的だし、展示も力が入ってる。なにより、さっきから看板を持って呼び込みをしている子達がハチャメチャに可愛い。衣装も凝ってるし、コンセプトがわかりやすいのも親切。ゾンビはちょっとガチ過ぎて悲鳴上げそうになっちゃったけど。イマドキの高校生の本気やばい。プロの犯行。 「そこのカッコいいお姉さーん!3-Cのアトラクションハウスで遊んで行きませんかぁ?すげえ楽しいっすよー!」 「あ、コラ!抜け駆けすんな!美人のお姉さんは是非うちの南国風BARで休憩していって下さ~い!ドリンクお安くしますよ~」 アトラクションにバーだなんて、魅力的だなあ。でも。   「ごめんね、今日はお目当て(・・・・)があるんだ」 サングラスを少しだけずらして頭を下げる。呼び込みの男の子達は大袈裟に「ざんね~ん!」と言いながらも深追いをしてくるでもなく、爽やかでいいなって思った。悪質なキャッチとは違うもんね。 (みんなかわいいし、良い雰囲気でワクワクするなあ~) 七生くんに事前に聞いていた場所まであと少し。というか、さっきからイヤ~な予感がしてるんだけどどうか当たりませんように。当たる気しかしないけど。いやまさか。そんな。あの行列の先が目的地だなんて、そんなあ!やっぱり?!そうなの?!うそでしょ!バチボコに大人気店じゃん!全盛期のタピオカドリンク並じゃん?! 「ええぇ……これ私いっても大丈夫ぅ?邪魔になんないかな……」 ぽつり、誰に言うでもない完全な独り言のつもりだった。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加