𝟘𝟞 見つめて、触って、心ざわめく

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* 「で、なにか言い残すことは?」 「ヒエッ!ここ死刑台喫茶だっけ?!」 教室の良さを巧く残した昭和レトロ風の喫茶店の片隅で。私は尋問を受けていた。男性用のチャイナ服を着たとんでもないイケメンから。 「ふぐぅ……ぶっちゃけ凄まれてもご褒美ですぅ……」 「あ?」 「ヒエッ!なんでもありません!!」 どうしてこうなったのかは、遡ること十数分前。 『はいはーい、VIPなお客様ご来店~!オリご指名でーす!』 いい笑顔といい声で、迷うことなく高らかに言い放った七生くんと、その隣にいた私に一斉に注目が集まる。瞬間、静まって。あとはもう「ざわ……ざわ……」状態。ちょっと面白かったのはここだけの秘密。 『美方くんダメだって!さっき先生方の相手したばっかりで百瀬くん顔死んでる!機嫌も死んでる!ずっと無言でパフェ量産してる!』 『え~、大丈夫だって。いーからオリ呼んでよ』 『やだよ!怖いもん!』 『怖くないって。オリはなんだかんだ優しいでしょ。ほら、お客様待たせていーの?マジでオリにとってのVIPなお客様なんだよ?』 『もう!殴られても知らないからっ!』 『はいよ~、パンダ席で待ってるからヨロシク♡』 パンダ席とはなんぞいや。とは、思いつつ。スマートにエスコートしてくれる七生くんの後に大人しくついて行く。窓際、一番前の角席。なるほど、パンダ席ね。これはモモちゃんが疲れるのも納得だなあ。
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