𝟘𝟞 見つめて、触って、心ざわめく

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『こんな席ですみません。ここ、オリの接客専用で』 『見られるのは仕事で慣れてるから問題ないよ。客寄せパンダ席(・・・・・・・)ね。ウーン、モモちゃんの不機嫌さの理由が手に取るようにわかるわ~』 『まあ、ほぼ空席状態なんですけどね。さっきの子が言ってたように先生相手だとか、オリ個人が恩を感じてる人でも来なきゃ絶対に出てこないんで。いわゆるレアキャラ出現!ってやつです』 『あー、でもわかるよ。そういう会えるか会えないかのやつ、逆に燃えるんだよね。だからこの行列なんだ?いい商売してるねえ』 どうぞと渡された手作りのメニュー表に目を通し、どれもこれもなぜだか見覚えがあって、自分の大好物ばかりで、口許が緩む。 『これガチで頼んでもいいの?』 『あっ、もちろんです!せっかくなんでオリに作らせますよ。てかオリが裏方のメインなんで』 『へえ~、そうなんだ。じゃあ遠慮なく!ハムチーズサンドとチョコレートパフェ、ミルクとお砂糖たっぷりのカフェオレで!』 『リョーカイです。オーダー通してきますね』 ふわり、七生くんが立ち上がったことで生まれた風が運んできたのは甘くて芳ばしい良い匂い。それと、挽きたてのコーヒーの匂い。ちゃんと豆から挽いているのか耳にも幸せな音のプレゼントが届く。 多分、モモちゃんの拘りだろうなって。頬がむにむに動いてしまった。モモちゃん、うちのコーヒーメーカーとミルにすっかりハマっちゃってたから。それはもう自分で豆を買ってくるぐらいには。 『亜未夏さん、今日こっちのコーヒー豆でもいいですか?』 『えっ!どうしたのそれ!買ったの?』 『はい。おかげさまで今月はお金に少し余裕が出来たので』 『あっ、ああ~!あ゙~!例のモデル料ね!てか、食費と一緒に落としていーよ!私も飲むんだし。遠慮しないで~』 『いえ、これは俺の趣味ですし。ちゃんとしときたいです』  
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