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賛辞のつもりだった。いつもありがとうって。感謝の気持ちを込めて。それなのにモモちゃんはピタリと動きを止め、息を呑む。
あ、やばい。私、間違えたんだ。漠然とそう思った時にはもう手遅れで、モモちゃんは一人で立て直してなにもなかったと、身に纏う空気でまざまざと訴えてきた。なら、私もなにもいえないよ。
『パフェは後から持ってきます』
『え、あ、……ぅん』
『七生に誘われて来たんでしょ。今日はどんな設定なんですか』
『ううぅ、松ノ屋の常連太客設定のアミちゃんですぅ……』
『わかりました。常連客の〝アミ〟さんですね』
『あ゙あ゙あ゙あ゙!なんか!ヤだあ!他人行儀で!ヤだあ~!』
『っ、そんなのそっちの方が!』
『え?』
『……いえ、なんでもないです』
ここで漸く、冒頭に戻る。さながら私は蛇に睨まれた蛙だ。ゲコ。
サプライズ気分で相談もせず、勝手に来たのがモモちゃんの逆鱗に触れちゃったのかな。でも、今日は私にも引けない想いがあって、どうしても色んな人と関わってるモモちゃんが見たかった。
見たかった、ん、だけど、逆に見られてるうううう!
「モ、モモちゃ……百瀬くん!」
「なんですかアミさん」
「んぎぃ!やっぱり他人行儀!じゃ、なくて!めちゃくちゃ写真撮られてるけどいいの?」
「……ああ、まあ、諦めました」
「諦めないで!!」
「っ、モノマネ入れてくるのやめろ」
ふふと笑った顔を見せないように伏せて、また艶やかで美しい絹糸のカーテンが出来る。さらさらで、きらきらで、あの、ちょ、シャッター音すごいな!笑った気配に敏感すぎでは?!気持ちはわかるけど!
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