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その日の夜、良子は恵子の元を訪れた。
「どうしたの?こんな時間に」
「恵子ちゃん。あの、優ちゃんって子」
「優ちゃんがどうかしたの?」
「あ、いや、あの子すごくいい子よね。テキパキ働いてくれるし、みんなもあの子の事が大好きだって。ただ…」
「ただ?」
「優ちゃん、時々すごく寂しそうな顔をするのよね。この前も突然泣き出しちゃって。その、あの子、どうして家出を?」
「なんかもう全部嫌になっちゃったみたいよ。特に恋人と喧嘩したのが大きいみたいで…」
「恋人と?」
「ええ。私もそうくんのことを詳しくは知らないんだけど」
「そうくん?」
「ええ。これも本当の名前ではないんだけど…。あ、そうだ。この人よ」
恵子は鉛筆で描いた絵を見せた。
「優ちゃんに特徴を聞きながら描いたの。見せたらそっくりだって、泣きそうになっちゃったからもうあの子には見せてないんだけどね。見たことない?この子。旅館に泊まりにきたこととか…」
「ないわね、この町の子なのかしら」
「それがどうやら違そうなのよね。優ちゃんは本当に良い子なんだけど、わからないことだらけなのよね…」
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