君と交わしたあの日の約束

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 今日は一限から四限まで授業がある。優が家に着く頃には六時ごろになっているだろう。この日の授業の内容はほとんど頭に入ってこなかった。友人との会話もあまり覚えていない。気づいた時には外が少し暗くなっており、全ての授業が終わっていた。駅で友人と別れ、改札を通ると「おい」と声をかけられた。碧の親友の滝本光瑠(たきもとひかる)だった。 「パスケース、落としたぞ」 「え?あ、ありがとう!」 「なにぼーっとしてんだよ、なんかあったのか?」  光瑠の言葉に優は思わず答えそうになるが、碧の耳に入ってほしくないので、優は言葉をグッと堪えた。 「ううん。何もないよ。カバンに入れたつもりが入ってなかったみたい。光瑠は?今授業終わったの?」  たわいもない会話をしながらホームに向かい、電車に乗り込む。大学の最寄りから三駅過ぎたところで、光瑠が慌てた声で言った。 「あ、俺、今日友達と飯行く約束あるんだった。えっと、次の駅で乗り換えれば良いんだっけ?」 光瑠が困ったように頭を掻いた時、長い袖が下がり、時計が見えた。 「あれ、ねぇ、その時計」 「あー、これ?かっこいいだろ。碧にもらった」 「え?」 「あ、俺ここで降りるわ、悪りぃ。またな!」 「あ、ちょっと!」  優の声は届かず、光瑠は早々と人混みの中に消えていった。光瑠がしていた時計。あれは確実に優が碧にあげた時計だった。
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