君と交わしたあの日の約束

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 優は早足で家に帰り、碧にメッセージを送った。 『あのさ』 『なに??』 『違うとは思うんだけど、私が誕生日にプレゼントした時計、光瑠に渡した?』 『え、光瑠に会ったの?そう。ごめん、勝手に』 『え?あれ本当なの?』 『うん』 『なんで?』 『なんでって。見たいって言われたから?』 『えっと、それで、』 『ん?』 『なんで今も光瑠が持ってんの?』 『そう言われても』 『誤魔化さないでよ。そうやってはぐらかしてれば私がなんか言ってくれるとでも思ってんの?』 『違う。そんなに言うなら光瑠に聞けばいいだろ?』 『え、なんで光瑠が出てくるの?』 『それは』 『今、光瑠が持ってるから?』 『あ、そうそう。打つの早いね』 『え、それ、今関係なくない?』 『は?関係あるだろ』 『いや、ないでしょ。あー、光瑠は親友だから私より信頼してるんだよね』 『そんな風にゆったことないだろ』 『ゆじゃなくてい!!!この前も話したよね!!!いつになったら直してくれるの!!』 『なんだよ』 『あー、もう。それより、結局時計はどういうことなの??』 『珍しく怒ってんの?てか、そんな小さなこともういいじゃねぇか。これからは気をつけるから』 『そんな小さなこと…?良いわけないじゃん…』  優はそこまで送るとスマホをベットに投げつけた。そして、小さな鞄と財布を持って外に飛び出し、海が見える丘に向かった。ここは私のお気に入りの場所。石の階段があるのをたまたま見つけて、そこを登ったら汚れたベンチがあって、綺麗にしたらまだ座れそうだったから一人で一日かけて掃除したんだっけ。ここは私の秘密の場所。ここなら泣いていても誰にも見られない。私は自動販売機で買った紅茶を手に、海を見ながら泣いた。優はいつも他人の目ばかり気にしてる。だから、プレゼントを選ぶときは必ず他の人の意見を参考にしてる。でも、碧と一緒にいる時は本当の自分でいられるし、碧なら喜んでくれると思って優が初めて自分で選んだプレゼントだった。それを人にあげちゃうなんて。ぽろぽろと涙が止まらなかった。優はある日の事を思い出す。小学生の頃、初めて碧にあげたバレンタインのチョコ。優はドキドキしながら渡した。碧はそれを、帰り道に友達四人と一緒に食べていた。せっかくあげたものだから一人で食べて欲しかったな。とは思ったものの、碧が美味しそうに食べてくれていて、優は嬉しかった。しかし、碧の友達の一人が「なんか、このチョコ、センス悪くね」と言っていた。この日をきっかけに、優は自分の行動や持ち物が、周りの人に本当はどう思われているのかが気になってしょうがなくなった。碧はあのチョコをきっと喜んでくれていたし、優がその話を聞いていたことも知らない。でも、優はそこから自分を隠し、他人によく見られる人間になろうと必死に努力をした。  そんな事を思い出していると、優の目からは次々と涙がこぼれ落ちた。それでも、この場所から見る風景は本当に美しかった。夕焼けに染まった空と海がどこまでも広がっていて、海から吹く強い風が、嫌な気持ちとか悲しい気分を全部吹き飛ばしてくれるような気がした。  
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