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「晴れてよかったね〜。」
「うん!」
父親は仕事に出ているのか、葵が知るはずもない何処かの母親と子供がそんな他愛もないやりとりをする。
本当に、こんな家族がいるのかと葵は一瞥をくれ、すぐに視線を逸らす。彼女とて、自身の容姿が不気味なのは重々承知しているのだ。
葵がその子供のように無邪気な女の子として、家族と出かけたりして時間を過ごしたのは小学生が最後であった。低学年、中学年と成長し、高学年ともなると大人の空気が少し読めるようになったのだ。中学生にもなれば教師の態度も一変し、学校内の雰囲気も互いに安定できる集団を形成するようになる。そして高校生ともなれば、その集団の形成に焦りを感じ、集団を形成すればその中に割って入ることは葵には困難であった。
むしろ葵は中学の頃から少人数の集団でひっそりと過ごし、高校では一人でよく過ごすようになった。授業で当てられたときにしか目立った発言はしない。
集団行動における暗黙の了解も、葵の中では薄れつつあった。そして今の彼女がいるのだ。
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