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 俺は黙した。  空条には威厳にも見えるかもしれぬが、実のところ言えることがないだけだ。決した以上は揺るがない。が、しかし。それは俺の弱さゆえの決なのだ。 「……もちろん、何ごとも暁士様のお心のままに」  空条らしくそれ以上には詰め寄らず、……ですが、とつなげた。 「医師の資格を得るのみならば、あと一年ほど時を待ちこの私が推薦すれば確実でしょう。しかしそれまでも隊の陰助として空医所にいるならば、その」 「ん?」 「廼宇の給はいくばくか出るものでしょうか。いや、そろそろ空医所からも給を出すつもりでおりまするが、また別に、陰助でもあれば隊の者らを廼宇のいる日に見られるゆえ、私としても大いに助かります」 「ああ、そうか。今までは火急の折以外には曜日をずらしていたからな」  と、口は勝手に動きつつも、内心で呆然とした。  給。……忘れていた。  というよりも廼宇の隊への登録それ自体を進めておらぬ。  陰助になれと言いながらも正当なる手続きをしない。俺は廼宇を無償の手伝いとでも思ったものか。  空医所では見習いゆえこれまで給はなかった。廼宇の給は薫布のみ、しかも半額近くを俺が取り置いているのだ。それでも食住も書物もあるのだし使う余暇もなく、困ることはなかろうが。  ……だが。一人で暮らすならば足りぬに違いない。廼宇自身はいかに心づもりしたものか。そして、俺は。……何も、思い至らずにいた。
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