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「……本心を言え。……俺を不安にさせるな、廼宇」  廼宇はゆっくりと身体を起こすと、しばし考え込んだ。 「……先ほどの話とは別なのか、同じか。己でも計りかねますが。いずれにしても、……苦しい」  不可思議な言をひとり言のようにつぶやいた後は寝台から窓際の絨毯に降りて坐し、姿勢を正す。  何か重大なことを告げつつあるその様は、俺を怯えさせるに十分だった。 「どこまでも共にありたいと。そればかりを願って日々を過ごして参りました。なれど、今は行き場がわかりませぬ」 「俺が振り回したからだ。……悪かった。俺が悪かったのだ。遠征に伴うと言い、そして止めた」 「己のことが己の知らぬうちに決まる。それで良かったのです、ずっと。なぜならその先は私の願いに通じていたから。ですが、ですが今は……」 「お前を危ない目に合わせたくないのだ、二度と」 「……私が刺されたからですか。私が弱いからですか。いかにも仕方なかったことなのに。……どう鍛えれば、何をすれば、以前のようにお側への道を示していただけるのですか。……元怜様が。黄暫様や隊の方までも……羨ま、しくて」  廼宇の声が震えた。  両手で顔を覆い目に当てる。涙を押し込めるかのごとく。  「……安穏とした妾でなどいたくない。女ならば子を成せる。子がなくとも妻として家を整え役立つことができる。私には何もありませぬ。……だからこの度はまた、言われた通りに薫布に空医所にと気を入れております、しかし」   廼宇は手を降ろした。  もはや止まらぬ涙が滴り、濡れた頬に行燈の火が照り返す。 「陰助は空医所でのほんの一時。薫布の益もあなた様ご自身の財には不要です。私が薫布で働くのは、ひとえに私自身とわずかながら店の者らの助けになるのみ」 「俺が集めた者らなのだ。彼らを助くはすなわち俺の助けとなる。……そもそも、廼宇。お前が、その存在自体が俺に必要だ。傍にいるだけで、それだけでよいのだ、廼宇。分かっているだろう」 「それでは小白と同じです」 「何を馬鹿な」
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