第1章 仕事とプライベートは分けたいだけ

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そして、タクシーは東側の住宅街に来た。 「俺の自宅は、この辺なんだけど、君の自宅は?遠いの?」 「お気遣いなく。」 うっかり男性に自分の自宅を、知られたくない。 まあ、7歳も年下の社長に知られても、何の支障もないとは思うけれど。 一応ね。 すると社長の手が、私の右手に伸びて来た。 もう少しで触れそうなところで、止めてある。 これは、手を触れたいって事? 胸がキュンとした。 いっそ、思い切って握ってくれればいいのに。 いやいや、社長には花音ちゃんって言う彼女がっ! 「……俺の家に寄っていかない?」 「えっ……」 私は社長の顔を見た。 社長は、タクシーの窓を見ている。 窓に映っている顔は、どことなく照れくさそうで。 私は、”はい”と返事をしてしまった。
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