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二年続きの旱魃であった。
バール河の水は涸れ、川床は干上がり、ひび割れた泥の上で魚たちが死んでいた。
僅かに残った水溜りを求めて、やせ衰えた獣たちがよろよろと歩いていた。
陸稲の畑は茶色に枯れ果てていた。家畜たちは暑さと乾きに悲鳴のような声を絶え間なく上げていた。
人々もまた、死に始めていた。
ティトリが初めて雨乞いをしたのは、そのような夏のことであった。
彼らの言葉で、祈祷を行う者のうち最も大いなるものをクマリと呼ぶ。我々の言葉でこれを正確に訳すことはできない。概ね五歳から八歳の子供の中から、クマリとなる者が選ばれる。
クマリは親元から引き離され、王宮近くに豪奢な屋敷を与えられ、王者そのもののようなきらびやかな衣装を着る。それは人中に現れた神の装いでもあるし、神に捧げられる贄の印でもある。
クマリはほとんどの場合、女児だ。村ごとに雨乞いを行う市井の祈祷師と違い、クマリはただ王一人のために祈祷を行う。多くの場合、初潮を迎える九歳から十五歳の頃に、クマリはその任を解かれる。そして、新たなクマリがまた選び出される。
ティトリがクマリとなったのは八歳のころだった。親がなかった。生まれた村もなかった。そうしたものは、すべて戦で焼かれた。ガド族の戦士が焼け跡をさまよっていたティトリを見つけ、小間使いとして砦に連れ帰ったのだった。
それが何故、クマリとして選び出されたのか、ティトリ自身は事情を知らない。考えたこともない。生きることはされるがままに流れさすらうことだとティトリは悟っていた。
ティトリのために祭壇が築かれていた。生贄が捧げられ、それを焼く煙が天高く登っていた。周囲には王とその妻達と、有力諸族の族長たちが集まっていた。誰もが憔悴した顔をし、ティトリに最後の期待をかけていることがわかった。
ティトリは祭壇に登り、炎の前に立ち、目を閉じた。
人々の苦しむ声が聞こえる気がした。草木も獣も、皆泣いていた。その声に応えたいと思った。
「叢雲呼ぶ神ムババ・ムワナよ、来たりて雨を降らせ」
そう唱えると、にわかに空がかき曇った。
居並んだ族長たちがざわめいた。自分がどれだけ特殊な現象に立ち会っているのか、ティトリは知らなかった。
やがて、大粒の雨がぽつりと落ちてきた。稲光が閃き、爆音のような雷鳴が鳴った。
豪雨となった。
何事もなかったように祭壇を降りるティトリを女官たちがとりまき、傘を差しかけて屋敷まで連れ帰った。
ティトリ一人のために整えられた、鳥かごのような屋敷に。
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