ただ、あなたが好き。それだけ。

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1年前。 『逆波。お前、俺に指図すんの?』 『指図じゃない。イジメはダメだって言ってるんだよ』 私は、今より自分の意見を言える性格だった。 壊れてしまったのは、あの日から。 『は?イジメ〜?俺たちがイジメしてるって?』 後ろに庇った男の子が震えてる。 『なぁ、ユウ。俺、お前をイジメてねぇよなぁ?』 威圧的な態度で、震えてる男の子に話しかける姿に、私は頭にきた。 『アンタ達のしてることは犯罪だよ!ちゃんと録画したんだから』 『チッ』 舌打ちして、その場から立ち去ったクラスメイト。 『…………大丈夫?』 前髪が長くて、ちょっとぽっちゃりしている音の子に声をかける。 『………』 コクッ、と頷く彼に、私は良かったと微笑んだ。 だけど、それで事態が収まるわけがなく。 今度は、私が標的になった。 『逆波』 『はい、先生』 『お前………なんてことしてくれたんだ!』 イジメの首謀者が、権力者の息子だった。 『だからって、イジメていいわけじゃないですよね』 『…………お前は子どもだから、分からないんだ』 ボソリと呟く先生。 何となく察した。 先生は、私の味方にはならない。 間違えたことはしてない。 それに、分かってくれるひとはいる。 まだ、私は楽観視していたのかもしれない。 先生と話した翌日。 私は、予想以上にひどい現実を思い知る。 登校した私を、クラスメイトは一瞥した。 『おはよう!』 『…………』 『あの……』 『…………』 返らない挨拶。 こんなことはなかった。 『おはよ!……………どしたの、あーちゃん』 『あ、まりん………』 登校してきた友人は、異様な空気にビックリしている。 『おはよー、まりん。ねぇ、その人と話さない方がいいよ』 『は?何で?』 『え、だって………』 『アイツに、今度は自分が標的になるとでも言われた?バカじゃん。あーちゃん無視すんなら、私にも話しかけなくていいよ』 嬉しい………。 だけど、まりんが無視されるのはいやだ。 『まりん。私はいいから』 『よくない。あーちゃん、よくないよ。あーちゃんはさ、悪いことしたわけじゃないから』 うん、そうだよね。 『な、何よ………後悔しても知らないからね』 『大丈夫。後悔しないからさ。アンタ達こそ、きっと後悔するよ』 『……………さぁね』 本当はみんな分かっているんだろう。 まぁ、でも誰だって自分が標的になりたくない。 私は、まりんという味方がいて良かった。 学年が上がり、クラス替えがあったけれど、状況は変わらなかった。 唯一の救いは、まりんと一緒のクラスになれたこと。 だけど………、やっぱりジワジワと私は追いつめられてきた。 まりんも同じだったらと思うと………。 『まりん、もう大丈夫だよ』 『え?』 『もう、私のせいで………まりんまで辛くなるのは嫌だよ』 『あーちゃん。私をみくびってもらったら困るよ!幼馴染捨てて、大事な友達捨てて、他の人とつるむくらいなら学校辞めるわ』 そうしないのは、あーちゃんがいるからだよ。 そう言われてしまったら、私はもう何も言えない。 『ありがとう』
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