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第2部 第4章 怠惰の神、武神姫とデート⁉
「確かこの辺りに…。あった。」
いつかイデア君とデートする時の為に隠しといた髪飾り。よく今まで見つからなかったな。
「おぉ~?嬢ちゃん、その髪飾りきれいだね。それを置いて引き下がるか、俺らに体売るか選んでよ。」
「どちらもおお断りします。これから大切な方とのデートですので。」
「兄貴はケンカ強えぇっすよ。大人しく引きさ上がらねぇなら、その大切な人とやらにも被害が及ぶっすよ。」
「あのお方はあなた達のような連中に折れたりはしません。」
「こりゃぁ、ちとお仕置きが必要そうだな。」
「望むところです。」
「おいイリオス。今日はせっかくいい服着てるんだから穏便に行こうぜ。」
「なっ…。イデア君、いつから居たの?」
「イリオスが何かトラブルに巻き込まれるんじゃないか、って思ってね。」
「なぁ兄貴。あんなナルシストぶってるヤツさっさとボコしちまいましょうよ。」
「今、イデア君のことをナルシストって言った?その罪は重いぞ。」
「「ひっ…。」」
「よく洋服に埃1つすらつけずに綺麗なみねうちを…。」
「あれくらいお安い御用だよ。私、イデア君のことを悪く言う人は誰であろうと許さないから。」
「でもなイリオス。俺もお前に居なくなられると困るんだ。だから、あんまりやり過ぎるっような真似だけは絶対にしてくれないで欲しい。」
「それって、私を心配して言ってくれてるの?」
「まぁな。」
「ありがとう。それじゃあ、行こう。」
「イデア君はどこに行きたい?」
「そうだな…。俺的には遊戯園かな。イリオスはこの国の遊戯園行ったことあるか?」
「あるにはあるけど、普通の客人として行くのは初めてだね。」
「じゃあ、俺を案内してくれないか?」
「ぜ、是非とも。」
「まずはこれに乗ろう。」
「『回転遊馬』?これって?」
「え?ただ乗って楽しむだけだよ。」
「そ、そうか。」
「実はここの回転遊馬
には2人乗り用があって、それをイデア君と乗りたいんだけど、いいかな。」
「上目遣いしなくたって別にオーケーだよ。」
「どう、乗り心地は?」
「何というか、浮き沈みがあって、これは本当に地上のものか?」
「ここの殆どの乗り物は、魔力で動いてるからね。」
「それって、どこから供給してるやつだ?」
「地下だよ。ここの近くの地下は魔力池だからね。」
「そうか。…それより、抱き着いて乗るのはそろそろやめてくれないか?周りの殺気がどんどん増幅していってる気が…。」
「そういう人たちは、自分から誰もが羨むような美少女を探しに行こうともせず、ただ諦めてる人たちだから、イデア君には関係ないよ。ただ私は、3421年前のあの日の彼女みたいに守ってほしいだけ。」
「遊びに来てる時に俺の心の古傷を抉るのはやめてくれ…。いくら#狼姫族__ファングリン__#が崇めてたのがお前だからと言って…。」
「あ、ごめん。言い忘れてたけど、この回転遊馬は、最後に急停止するの。」
「え?…ちょ、本当に急ブレーキなんだけど!?おい、苦しい、苦しい!」
「本当は私に思いっ切り抱き着かれて内心嬉しいいくせに。」
「どうだった、回転遊馬は?」
「いろいろと命の危険にさらされてたから本音言うともう乗りたくない。」
「そっか。ごめんね。じゃあ、次行こう。」
「ここは?」
「魔物屋敷だよ。遊戯園デートの名所の1つなんだ。」
「嫌な予感がする。」
「何~?嫌な予感って。それより、早く行こう。」
「何というか。ちょっと運営に会わせてもらいたい。剥製の魔物に交じって本物の魔物がいるぞ、ここ。」
「もしそれが暴走し出したら私たちで倒すだけじゃない?」
「じゃあ俺らがいない時はどうするんだよ。」
「それは…。きゃあっ!」
「どうした?」
「い、いや、魔物の不意打ちが…。」
武神姫ともあろう存在の反応じゃないだろ。今、イリオスはただの純粋な乙女になっているのか。
「しょうがない。だったら、俺も期待に応えてやるしかないみたいだな。」
「え?う、うわぁぁぁぁ!!!」
「きゅ、急にお姫様だっこして走って出てくるって、人間のバカップルのすることじゃん。まぁ私は嬉しかったけど…。」
「現にお前のやってることの殆どがそれに当てはまるだろ?」
「つまり、私たちはバカップル?」
「まだそこまでは言ってない。」
「ほら、早く次に連れてって、私の王子様。」
「俺はどこ行きゃいいのかしらんぞ。」
「あの高い鉄橋が掛かってるところ。」
「了解。っていうか、このまま?」
「このままで。」
「これ、は…?」
「鉄流星機って言うんだけど、鉄橋の一番上までくると、高速でそこを駆け降りるの。」
「俺、こういうの苦手かも。」
「そんなこと言わないで。王子様でしょ?」
「分かった、乗る、乗る。」
「なぁ、今は昇るのも降るのもゆっくりだが…。」
「この鉄流星機が速いのは最後だけだよ。」
「よかった。思ったほど怖いものでもなさそうだな。…あれ、何かさっきからすごい高度まで上昇してないか?」
「そろそろラストだね。」
「え?こ、この高さから急降下するのか?」
「そうだよ。」
「やっぱり俺こういうの無理だわ。」
「…あれ、何か鉄流星機止まってない?」
「この一番高い場所で!?何があった?」
「ねぇイデア君!何かあちこち爆発してるんだけど。しかも全部が魔力制御装置…。まさか!?」
「おいイリオス!こんな高さっから降りるつもりか?」
「鉄橋を蔦ればいいよ。」
「実は俺、高所恐怖症なんだ。」
「何でそれを乗る前に言ってくれなかったの?」
「いや、ただ忘れてたってのもあるけど、お前が乗る気満々だったから…。ほ、ほら、あれだろ?せっかくのデートで片方が悲しいままだとやっぱり途中でいろいろあるだろ?」
「私の恋がそんな理由で冷めるとでも?私はもう3240年近くイデア君が好きなんだよ?ホンキで好きじゃなかったらどうやってここまで長続きするの?とりあえず、被害が大きくなる前に魔力池に行きたいから、今度は逆で行くよ。惚れちゃいなよ、私の王子様。」
「早く行くんだろ?そんな冗談言ってる場合か?」
「分かってるよ。もっと愛してくれてもいいのに…。」
「ここが魔力池?魔力濃度がかなり濃いな。」
「誰か、そこにいるんでしょ?出て来なさい。」
「おや、思ったより早い到着だったな。」
「お前は今朝の!?」
「今朝はよくもまあやってくれたモンだ。俺はケンカ20年近くやってるから呼吸困難にまで至らない生半可なみねうちはあんまり効かねぇんだよ!それに、魔力制御装置を爆破できたのは、俺が物の魔力を操作できるスキルがあるからであって…」
「…生半可?私の技が?」
「そうだ、お前の技だ。」
「武神のこの私の技が?」
「そうだ、おま…、え?武神?まさか、【武神姫】!?」
「ご名答。それじゃあ、さようなら。」
「いやぁ、デートの邪魔者を瞬殺してくるとは…。」
「私とイデア君の時間を邪魔するヤツは誰であっても許せないからね。」
「なぁ、こうやって何やかんやしてるうちにもう夕方か。夕食はどうする?一応、クレアには夕食は作らなくていいって言って来たけど…。」
「だったら私、夕日が綺麗に見えるレストラン知ってるんだけど、どうする?」
「そうか。じゃあ、今回はそこにしよう。」
「マスター、久しぶり。」
「やぁ、イリオスちゃんじゃないか。そのお客さんは、何時ぞやら言ってたあの恋人かな?」
「はい。実は今、デートの帰りで…」
「あら。それなら、あれを作るわね。」
「あれ、って?」
「出て来れば分かるよ。」
「ただのミートソーススパゲティじゃないか?」
「いいや、それが他のお店とは違って…」
「ああ、今まで食べたことないくらいうまい。」
「気に入ってくれた?」
「食べたことないくらい美味しい?それならよかったよ。」
「あれ…、イリオス、めっっっっちゃ可愛い…。」
「え?きゅ、急にどうしたの?」
「イリオス、大好きだ!」
「えっ!?
え!?ねぇマスター、このスパゲティに何か変なものでも入れた?」
「惚れ薬さ。それも極上の。」
「マ、マスター、今すぐ浄化液ちょうだい、今すぐ!」
「え?ああ、これか?」
「イデア君、今もとに戻してあげるから。ほら、イデア君、これ飲んで。」
「いいや、飲まない。」
「だったら、私とキスしない?」
「よろしければ、是非。」
「その時に、この液体口に入れるからキスの時に飲んで。」
「ご褒美だぁ。」
「お願い、イデア君、このお姫様のキスで呪いを解いて。」
「お、おい!な、何で俺がイリオスとキスしてるんだ?」
「やった。お帰り、イデア君。」
「は、恥ずかしい、…けど、悪くないかもな。そんなにキスがしたいなら、あ、後、で…」
「やっと分かってくれた?」
「お、俺、えっと、意外と、その、イリオスみたいな大胆な性格、嫌いじゃなかったのかも…な。」
「大好きだよ、イデア君。」
「俺も好きだ、イリオス。」
「なんだいイリオスちゃん、彼氏に熱っい猛烈なキスしちゃってねぇ。やっぱり若いうちは結局ハッピーエンドじゃないか、こういう沙汰だって。さっきは私がスパゲティに惚れ薬混ぜたこと本気で怒ってたクセに。」
「あ、あれだと本物のイデア君じゃなかったから。…私が愛したいのは、本物のイデア君だけだから。」
「まぁ、2人ともお互いをよく愛し合うことだ。」
「アンチモンさん、結局、失敗してしまいましたね。」
「…はい。」
「アンチモンさんにはエリーさんがいますが、私には…。」
「仮に俺にエリーがいたとして、それでも今はお互い不幸に変わりはない、クレア殿。」
「何というか、もう言い表せられない感情だな…。」
「…。」
第2部4章完 良俗の為4.5章はなしで。 5章も乞うご期待
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