第2部 第1話 精霊の皇帝

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第2部 第1話 精霊の皇帝

俺は、もうこの旅に疲れかけていた。 「ねぇ、もっと話そうよイデア君!」 「あの…、イリオス。申し訳ないけど、ずっと腕に抱きついて歩かれると、歩きにくいし、人目気にしてる?」 「ううん、気にしてない!」 「ここまでするかよ…。この国ってお前の弟子が統治してる国なんだろ?皇帝の師匠がこんなことしてるとか知れ渡ったらお弟子さんかわいそうだろ。」 「あの娘こはそんなこと気にしないよ。」 「ならいい…わけないだろ!」 「もぅ~。そんなに怒らないでよ、イデア君のカッコイイ顔が台無しだよ。」 この恥じらいを知らない娘が本当に『武神姫』なのか? 「そういえば、お前がその皇帝と最初に出会ったのは何年前の話だ?」 「だいたい…、560年前くらい?」 「まさか、その皇帝って、精霊王族(ゲイツィア)なのか?」 「そうだよ。」 「ここっていうか、ジェネシス国ってどの種族の国?」 「人間と精霊王族(ゲイツィア)の共存国家だよ。」 「それ先に言ってくれれば道にオルソ樹木があったのに…。」 オルソ樹木とは、精霊王族(ゲイツィア)が由緒正しい木材と認定している樹木。 本来ならば、精霊王族(ゲイツィア)が統治している国との外交の際には献上するべきとされている。 「大丈夫。この国は他の精霊王族(ゲイツィア)の国と違って、外交の時にオルソ樹木なくても大丈夫だから。純粋な精霊王族(ゲイツィア)の国じゃないからいらないの。」 「そうなのか。」 「まぁ、そのせいで何年かに1回は乱が起こるんだけど。前は4年前だったかな。」 「ははは…。」 よくそんな国が続いているな。 「まあ、その乱に私が参加するから反乱側が毎回沈められてるんだけど。」 さすがは武神姫。恐るべし。 「お兄ちゃ…、お兄さん、お姉さん。着きましたよ。」 「クレアちゃん今イデア君のことお兄ちゃん呼びしようとしてお兄さんって呼び直したでしょ?もー!可愛いヤツめ!」 「あわわ、やめてくださいお姉さん!」 本当に彼女は武神姫なのだろうか? 「師匠ー!ひさしぶりー!」 「この娘こは?」 「ここに来るまでに話してたこの国の皇帝だよ。」 「えぇー!?」 「あ!ズルい!今イデア君とクレアちゃんハモった!」 「ふふっ。師匠、私と会ってないうちに随分変わったね。もしかして、その人に恋、しちゃったり?」 「それはそうだけど!うぅ…、改めて認識すると恥ずかしい…。」 俺の心配は杞憂じゃなかった…。やっぱり武神姫でも乙女だったか。 「そこの2人とは初対面だし、自己紹介するよ。私はスワン・トゥカビオリ・ティオルフ。【綺羅女帝】と【紅伯の怪物】の二つ名を持ってるよ。よろしく!」 「俺はイデア。一応、イリオスから見て後輩だ。よろしく。」 「なるほどね。確かに見てくれは師匠の好みに近いね。」 「わ、私はあの戦争でイデア君を好きになったの!!あの頃に見てくれで恋をしている暇は無かったよ!」 「ほほう。彼のやった事に惹かれた、と?」 「正直に言うと…、そうなっちゃうけど。で、でもこの事は友達にしか言ってないから!!」 「友達って、姉さんのことか。いつの間に姉さんと仲良くなったんだな。」 「イデア、姉さんがいるんだな。ちなみに誰のこと?」 「義理の姉さんだけど、静寂の神でシュレティって聞いたこと、あるか?」 「…なっ!?シュレティ…!?」 「どうかしたか?」 「シュレティ…、いや、シュレティ様は…、祖父母の命の恩人です。」 「どういう事だ?」 「詳しいことは省くが、あの戦争で私の祖父母の命を救ったのは、静寂の神シュレティだと聞いてきたんだ。」 「…とすると、この国は姉さんを祭っているのか。」 「その通りだけど、この国は数年に1度は必ず乱が起きる。その度に師匠が来てくれるから毎回短期間で終わるんだ…。あと、師匠の恋人だから言っとくけど、私はこんな姿でも1128歳だからね!」 クレアと同じ歳に見える姿してその年齢…。れっきとしたロリバか。 「今、私のことをロリバだと思った?」 「い、いいえ…。」 「ならよろしい。」 「私はクレアと言います。宜しくお願いします。」 「きみ礼儀正しいね。そういう娘こは歓迎だよ。その胸あたりの肉の飾り以外は、ね。」 「女帝ともあろうお方が他人ひとの発育にケチをつけるのですか?」 2人とも互いに笑顔で圧かけあってる…。これが修羅場ってものか。 「と、とりあえず落ち着こう。なぁ、お前の二つ名の【紅伯の怪物】って何が由来だ?」 「その二つ名は、私が一度<魔帝二十四騎士>の1人と殺り合った時、瀕死まで追い詰めたのに逃げられちゃって、血まみれだった原因が全部敵の返り血で私が無傷だったから、かな。」 俺より年下なのにめっっちゃ強え…。 「で、本題に入るとだけど、ティオルフ、私と一緒に、この2人を指導してほしいんだけど、いい?」 「じゃあ、久しぶりにこの国の聖地巡礼しながらでいいなら、ね。」 「そうしてもらうつもりでしたよ。その方がイデア君がもっと強くなれるし。」 俺は、いったいどのくらいしごかれるのだろうか? 第2部1章完 2章も乞うご期待
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