ひょろ眼鏡さんとの出会い

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ひょろ眼鏡さんとの出会い

「では、一週間以内に連絡をさせていただきます。」 ニコリと微笑み、そう告げた面接官の方に深くお辞儀をし、私は部屋を出た。 足早にエレベーターへと足を進めると一階ボタンを押し、扉が閉まるのを待って「はーっ」と深い溜息を吐く 「これは……また落ちたよね……」 現在再就職の活動十連敗中である もう、落ちるパターンが嫌でも分かってしまっていた。 前職は、小さな会社で事務をしていた。 嫌で辞めた訳ではない。 何時ものように出社をすれば、 そこにあったはずの会社が忽然と消えていたのだった。 経営が傾いていたという噂はあったが、まさか…って思うよね。 夜逃げ……それである。 一人暮らしをしている以上、齧れる脛も無ければ、貯えにそこまで余裕があるわけでもない。けれど……連敗がこうも続けば流石に凹むわけで……。 再び深いため息を吐き、取り合えず目の前にあるコンビニに足を向けた 暖かいコーヒーでも買って、気持ちを切り替えたい、そう思ったからだ。 レジでコーヒー代を支払い、挽きたてのコーヒーが出来るのを待つ カップに蓋を付けようとしたとき、勢いよく店内に入ってきた学生達。 その一人の大きな鞄が私にぶつかり、カップからコーヒーが大きく揺れ零れた 「あつ……っ!」 カップを持つ手にコーヒーがかかり、思わず声が零れる 不意に背後から腕を捕まれ、驚いて振り返れば、ひょろりと背の高い男性が立っていた。 「火傷ですね……まずは急いで冷やしましょう」 「え?あ……はい……?」 腕を引かれるままにトイレの洗面台へと向かう 男性は蛇口を捻ると、私の手を流水で冷やしはじめた。 水の音をBGMに、鏡越しでその男性をそっと見つめる 背は百九十センチ近くあるだろうか?年齢は三十代前半くらいに見える。 ひょろりと長いイメージで、優し気な整った顔には丸眼鏡。 髪の毛は腰まで長く、ひとつに纏めて括られていた。 きっと世間でいうところの、イケメンという属性に入る人だろう。 「うんうん」と心の中で大きく頷く しかし……どちらさま?と心の中で大きく首を傾げた 「火傷の赤みは引きましたね。まだ痛みますか?」 「え?あー……少し?」 フム、と考え深げに顎に手をあてた、ひょろ眼鏡さんは「うん」と頷き 再び私の腕を掴むと、スタスタとお店の外へと歩き出した。 「え?あの…?」 困惑気味に声を掛ければ、ひょろ眼鏡さんはにっこりと微笑み 「僕の診療所、直ぐそこですから。念のため治療しておきましょう」 そんな言葉が返ってくる え?この人医者なの? いや…そんな事より、なんだこの展開? 初対面にも関わらず、有無を言わせない、圧のかかった笑顔で引かれるままに歩いていく。そして気が付けば、私は見知らぬ診療所の診察室の椅子に座っていたのだった。 「え?何でこうなった?」
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