透明な君とアネモネ

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 アネモネの花言葉は赤が君を愛す、青があなたを信じて待つ、白が希望・期待、ピンクが待ち望む。    「ずっと、ずっと…伝えてくれてたのに…」  俺は日和のいない部屋で日記帳を抱えて泣き崩れる。俺の泣き声が少し聞こえたのか、おばさんが部屋に入ってくる。泣き崩れる俺を見て、優しく背中をさすってくれた。  涙も落ち着き、日和の家を出ようとした時には空が赤く染まり始めていた。俺は開いている花屋を探して、赤色のアネモネを買う。そして、すぐにお墓へと向かった。    「日和っ!思い出した、思い出したから姿を見せてくれないか?」  お墓にある花は既に枯れかかっていた。  「お願いだ…。俺も日和にちゃんと伝えたいんだ…」  爽やかな風が吹き、その風で花がボロボロと落ちてしまいそうで。  「日和…!」  その時、一週間前みたいに頭に温かい空気を感じた。目の前には最初よりも透けている日和がいる。  「そんなに何回も名前呼ばないでよ、恥ずかしいじゃない」  「だって、姿がないから」  日和は俺に微笑みかける。  「で、思い出したの?」  俺は証拠にブレスレットを見せる。すると日和は嬉しそうにしていた。  「ちゃんと思い出したよ。だから、だから俺の話も聞いてくれない?」  俺が言うと日和は「何?」と微笑む。俺は赤いアネモネを日和に見せた。  「全然、日和の気持ち気づかなくて本当にごめん。でも、俺も…、俺も日和が好きだ」  
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