「普通」じゃない後輩、「特別」じゃない妹

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「それなら、ここを道なりに行けば着くわ。通り過ぎると左手に階段が見えるから、それを目印にしてみて」 「ありがとうございます……! それでは、失礼します……」  ぺこり、と一礼して少女は去っていった。 「ほら、私たちも行くわよ」 「うん……」 「……頭打った?」 「ううん、大丈夫……」  チャイムが鳴った。玲華は由紀に手をとられて立ち上がる。教室は目の前なのでもう焦る必要はない。 「……妹さんの名前、蘭さんだっけ?」 「うん……すっごい似てた」 「……そう」  それ以上、由紀は何も言わなかった。  その日の放課後は、体育館で部活動紹介だった。玲華たち文芸部は、三年生が早期に引退したので玲華と由紀の二人だけだ。望都高校は、三年生になると部活を続けるか受験に集中するか選ぶことができる。三年の先輩たちは皆受験に専念するとのことで、春に最後の文集を出して辞めていった。文化祭は九月にあるので、受験を考えればそれが妥当だろう。制度上はもちろん九月まで残ることはできるが、そこまで書き続ける人は玲華の知る範囲ではいなかった。
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