「普通」じゃない後輩、「特別」じゃない妹

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 というわけで、今回の部活動紹介は部長である由紀と、副部長である玲華の二人で行うことになった。部員を獲得しないとまずいという危機感はあるけれど、まあ後二人入ればいいわけだし、文芸部に興味を持ってくれる人はいそうなものだ、と玲華はその点に関しては落ち着いていた。 「どうしたの、さっきからきょろきょろして」  ただ別の理由で、玲華は落ち着きを失っていた。彼女は一年生の列を探るように視線を動かしていた。 「……さっきの子、いないかなと思って」 「瀬乃さん……だったかしら? でも見つけてどうするの」 「特に何ってわけじゃないんだけど……」  由紀に言われて玲華は目を伏せる。確かに由紀の言う通り、彼女を見つけて私はどうしたいんだろう。「私の妹になって」とでも言うつもりなのだろうか。 「ただ、会いたいなって思っただけ」 「それは蘭さんの姉として? それとも槇玲華として?」 「…………」  玲華はその問いに対する明確な答えを持ち合わせていなかった。二人の間に沈黙が降りる。 「時間になりました。それでは、部活動紹介を始めます」
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