「普通」じゃない後輩、「特別」じゃない妹

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 アナウンスが体育館中に響いた。それを合図に、それまで話し声で賑わっていた体育館の空気が一変する。先ほどまで由紀との間に流れていた沈黙が体育館中に伝播したようだった。それでも、一年生は期待でそわそわと落ち着かない様子だ。  運動部から紹介が始まっていく。普通に活動内容を紹介するところもあれば、コントのような、劇のようなお芝居をしながら部の個性を紹介するところもあり、十人十色といったところだ。と言っても、各部に与えられた時間は二分。  玲華たちは文芸部の活動内容である読書会や、自作の小説、詩などを持ち寄っての批評会、その批評会で提出された作品を年に二回文集にすることを説明し、今年部員が四人以上にならなければ同好会に格下げしてしまうことを伝えた。 「終わったね……」 「ええ、お疲れ様」  すべてのプログラムが終わり、緊張を解く意味で玲華は大きく伸びをした。由紀は少しだけ息を吐いて、背筋を伸ばす。いつ見ても綺麗な所作だと玲華は思った。 「戻りましょうか」  結局玲華が瀬乃葵を見つけることはなかった。無理もない、一年生だけで三百人はいるのだ。
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