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二人は普段の活動場所である多目的室に移動した。多目的室とは名ばかりで、実際に授業で使われることはほとんどない。ここは昔、校舎の一部建て替えが行われた際に建てられたプレハブだ。つまり建て替えが終わった今では用済みで、保護者会の集まりなどで使われている。そのため紅茶やコーヒーを入れられるようにカップや電気ケトルが置かれていた。
今日の活動時間はあと三十分くらいだ。特に話すこともないし、こうして多目的室に来ると各々本を広げて読書を始めるのが日課だった。会話はほとんどない。読書会は気が乗った時に、批評会は決まった曜日に開催される。今年の文化祭に向けた批評会には、人数不足で一年生にも書いてもらうので余裕を持って開催したほうが良いだろうなというのが、二人の共通認識だった。
玲華にとっては、こうして由紀と静かな時間を過ごすのは嫌いではない。むしろ心地良いとまで思う。今日もいつもと同じように、各自読書をして過ごし、下校するものだと思っていた。
「あの……文芸部の活動場所ってここであってますか」
その静寂を破ったのは、小柄な少女だった。突然の来訪に、驚きと喜びで玲華と由紀は目を合わせる。
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