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葵がもし入部したら、毎日顔を合わせることになる。蘭に似た彼女を、「普通」の目で見ることが自分にできるのだろうか。電気ケトルから昇る湯気を見ながら玲華は不安を募らせた。いっそこの湯気のように不安が上昇してたち消えてしまえばいいのにとさえ思った。
「瀬乃さんは改めてになるけれど、二人のお名前聞いてもいいかしら」
ぴんと綺麗に背筋を伸ばした由紀に釣られて、二人も肩に力が入る。
「ああ、いいのよ。楽にしてもらって構わないわ」
「ありがとうございます……改めまして、瀬乃葵です」
軽く自己紹介をした葵は、少し肩をすぼめて一度閉じた唇を動かした。
「えと……親の再婚で名字が変わるので、できれば名前で呼んでいただけたらなと……」
「わかったわ、葵さん。そちらは?」
「私は茂木かな子です。名前で呼ばれる方が好きなので私もかな子と呼んでください」
「ありがとう、かな子さん。私たちはどうしましょうか」
「私は名字でも名前でも好きな方で呼んでもらって構わないよ。変なあだ名は嫌だけど」
「同感ね。二人も好きに呼んでくれていいわよ。私は中川由紀、一応部長を任されているわ」
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