「普通」じゃない後輩、「特別」じゃない妹

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 怪訝な顔で玲華は葵の様子を伺う。どうして入部の前に文集を読みたがるのだろう。その理由を問おうとしたが、どこか不安げに揺れる瞳に吸い込まれそうで喉が引っ込んでしまった。  玲華は文集が立て掛けられている本棚に手を伸ばし、三年前に出された二冊の文集と二年前に出された九月の文集を葵に渡した。葵は目次を確認すると、唇を一度結んでから、芯のある強い声でこう言った。 「これ、お借りしてもいいですか」 「残念だけど、バックナンバーは一冊ずつしか残ってないから部員以外は持ち出し不可なの。正式に部員になったら借りて行っても問題ないわ」 「いいんじゃない? 三年前ならデータ残ってるだろうし、失くしたらまた作り直せばいいじゃん」 「そうは言ってもねあなた……作り直すのに部員じゃないと印刷費が部費じゃなくて自費になるから、外部の人が持ち出せないようになってるんじゃない」 「お返しした方がいいですか……?」 「ううん、大丈夫。そのまま持って行って。責任はこの槇玲華が取りますから」
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