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いや、でもこれから平日は毎日葵さんと顔を合わせることになるのだ。玲華の思考は深く落ちていく。葵さんを見る度に、もし蘭が生きていたらちょうど彼女と同い年なんだな、と余計なことを考えてしまう。蘭が高校生になって制服を着る姿も見てみたかったなと、どうしても葵さんに蘭を重ねてしまう。
「考え事?」
自然と俯いていた玲華の視線が、隣に並ぶ由紀に移る。由紀は特に心配そうな表情をしているわけでもなく、「明日の天気はどう?」とでも聞くような調子だった。
由紀はいつも、玲華のことを気にかけてくれているようで、それでいて必要以上に踏み込まない優しさがある。その優しさにいつも甘えてしまうのだが、そのことに少し後ろめたさというか、罪悪感とまでは行かないにしろ、多少の申し訳なさが玲華にはあった。
「……うん、ちょっとね」
「葵さんのこと?」
玲華は視線を元に戻した。夕陽に後ろから照らされて伸びた二人分の影を見つめる。
「由紀は葵さんを見てどう思った?」
「そうね……あなたと知り合ったのは中学三年の時だから、妹さんの姿を実際に見たことないし……似ているのかどうか私には判断しかねるわ」
「写真あるよ、見る?」
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