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由紀と別れる最後の交差点に来た。ここを右に行けば由紀の家、左に行けば玲華の家がある。
「じゃあ、また月曜に」
「ええ、健闘を祈るわ」
ありがとうの意味も込めて、玲華は右手を上げて由紀に振る。遠ざかる由紀の背中を見送ってから、玲華は薄暗くなった帰り道をひとり歩いた。
「よし、準備いいな」
「う、うん……」
悟と玲華は壁に掛けられた時計を見やる。長針と短針が重なり正午を指していた。もうすぐ「二人」がやってくる時間だ。
「やっぱり俺、近くまで迎えに行ってくるよ」
「すれ違いにならない? 連絡入るまで待っていようよ」
「そ、そうだな……でもうちマンションだし、部屋番号間違えないかな……」
「それこそちゃんとメッセで送ったんでしょ? 大丈夫だと思うけど……」
そわそわして落ち着かない父を見ていると、玲華まで余裕がなくなってくる。こういう時、蘭がいてくれたら父さんを一喝してくれるのにな。蘭がいない今、心配性な悟の性格が玲華にまで伝播してしまいそうだった。
「……! 来たぞ、開けてくる!」
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