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チャイムの音とほぼ同時に玄関に駆けていく悟を見て、玲華は深い溜め息を吐いて代わりに期待と不安の入り混じった空気を吸い込んだ。新しく家族ができるかもしれない喜びと不安。その新しい家族は、私の新たな拠り所になってくれるのだろうか。
ずっと蘭のことだけを考えて生きてきた。蘭のいる生活が当たり前で、これから先も蘭と一緒に歩んでいくんだと思えば、不安は無かった。二年前、中学三年生になってすぐの玲華は、その蘭を失ってしまった。彼女はまだ、その欠けたピースを埋められずにいる。
「玲華、どうしたんだ?」
ぼーっとしていたら、二人を出迎えに行くのに遅れてしまった。玲華は慌てて玄関に向かう。
「お、来たか。紹介するよ、娘の玲華だ」
「こんに——」
こんにちは、と言いかけた口が開いたまま塞がらなかった。雷に打たれたようなこの感覚が、初めてではないように感じられて仕方がない。
「ま、槇先輩がどうしてここに……」
「葵さん、だよね……?」
二人してほぼ同時に発した疑問。状況がまるで理解できていない二人だった。
「あら、お知り合いなの葵?」
「え? えっと……初対面ではない、かな……」
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