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線香の煙が部屋に漂う。悟は窓を開けてから、呆然と立ち尽くす玲華の方に寄ってきて、二人には聞こえないように小声で話しかけてきた。
「玲華、大丈夫か」
「……ちょっとびっくりしただけだから」
「やっぱり、蘭に少し似てるよな。雰囲気とか」
「父さんは知ってたの? 葵さんが蘭に似てるってこと」
「写真で見ただけで、実際に会うのは今日が初めてだな。でも似てると思ったよ」
「なんで先に言ってくれなかったの」
「実際に会ったことなかったから、俺の思い過ごしかもしれないってな。それにそんなこと言ったら、玲華は二人に会ってくれたか?」
そのくらい平気だよ、と言おうとしたが、悟の言ってることは正しかった。そのあまりの正しさに、玲華は眉を顰めた。新しく妹ができると聞いただけでも動揺していたのに、その子が蘭に似ているなんて言われたら拒絶していたかもしれない。その点で悟のやり方は間違っていなかったのだが、やはり少し腹立たしいので、玲華は昼食のオムライスの卵を悟の分だけ半熟から堅焼きに変えることにした。
「あの、わたしも手伝います」
「ああいいよ、葵さんはゆっくりしてくれ」
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