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「近道なんてしようとするから迷うのよ。道なりに一周すれば目的地は必ず見つかるわ」
「でも急がないといけない時ってあるじゃん」
「人生は余裕がすべてよ。余裕を持つための努力を怠ってはいけないの」
「じゃあ私たちもそろそろ行こっか。余裕が大事なんでしょ?」
玲華と由紀は二教科分の教科書、ノート、問題集、プリントを抱える。軽く胸の下まで高さがあるそれは、見た目同様重量もそれなりだ。
「日直、黒板消してから出てってくれー」
化学教師の弱々しい声が耳に入る。そこで玲華は自身が日直であることを思い出した。
「ごめん由紀、先に行く?」
「いいえ、私も手伝うわ。二枚分の黒板、あなた一人だと遅刻するかもしれないし」
「ありがと。持つべきものは友だ」
はいはい、と言いつつ由紀は黒板消しを手に取る。なんだかんだ言って付き合ってくれる彼女が玲華は好きだった。きっとこういうのを面倒見が良い、と言うのだろう。玲華の網膜にふと妹の蘭と過ごした記憶が映し出される。蘭とはよく一緒に勉強をしていたが炊事の方は蘭がやってくれていたので、一方的に面倒を見ていたという感じはしない。
「……妹か……」
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