「普通」じゃない後輩、「特別」じゃない妹

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「普通」じゃない後輩、「特別」じゃない妹

「蘭——?」 「あの、大丈夫ですか……?」  心配そうな表情で少女は玲華の顔を覗いている。リボンの色からして、一年生だ。いや、そんなことは今の玲華にとってどうでもいいことだった。 「あなた、誰?」 「へ?」 「名前は」 「せ、瀬乃です……」 「下の名前は」 「……葵です」 「……蘭じゃないんだ」 「えっと……」  目の前の少女は困惑しているようだ。だが、玲華にはそんなことを気にしている余裕はない。  見間違いなんて程度のものじゃない。丸っこい目、背丈、後ろで結われた髪。そのどれもが、蘭を彷彿とさせた。玲華は少女をついまじまじと見つめてしまう。 「もしかして怒らせてしまいましたか……?」  少女が申し訳なさそうに玲華の顔を覗き込んできた。玲華はその仕草が何を示しているかはすぐに理解できたが、頭の大半を目の前の現象を処理することに使っていたため、生返事しかできない。 「どうしたの玲華。口が開いてるわよ」 「本当にすみませんでした。気をつけます……」 「いいのよ、走っていた私たちも悪いし。それより、迷子?」 「あ、はい……実は化学実験室がどこかわからなくて……」
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