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4月も中頃、俺たちは2泊3日の旅行に行くことになった。
ホテルの予約やら観光の計画やら、湊さんは色々決めてくれて任せきりになってしまったけれど、湊さんは気にするなと言ってくれた。
色々、とは言えどこに行こうとかそんなのは2人で相談したし、毎日楽しみだなあなんて思って過ごしていた。
仕事の方も、もう予約が入れられないように店の方にお願いしてあったからほとんど無くて気が楽だ。
そうやって毎日過ごしているうちに、旅行の日は刻々と迫ってきていて、気づけば当日。
スーツケースに詰めた荷物と手持ちのバッグを持って、迎えに来てくれた湊さん車に乗り込む。
「すみません、全部頼っちゃって」
「別にいいって。むしろ頼ってくれた方が嬉しい」
そんなふうに湊さんは言うから俺も嬉しくなった。
目的地は高速に乗って5時間くらいらしくて、運転も任せきりだから申し訳なくなる。
それにこの旅行だって湊さんはわざわざ仕事を休んで…、なんて考えていると、それがみ湊さんにバレてしまいそうで考えるのをやめた。
そうやって湊さんに対して思うといつも湊さんに怒られてしまう。
「寝ちゃっててもいいよ、眠くない?」
「いや、流石にそれは」
「だあから良いって、気遣わなくて。眠かったら寝な?」
優しくそう言われるから俺はこれ以上否定出来なくて、俺は素直に頷いた。
でも俺は眠くないから、何か話をした方がいいかなと思って楽しみですねなんて湊さんに言ってみる。
「楽しみって思ってくれてるんだ?」
「…思ってますけど…」
「そう?嬉しい」
「…何でですか」
楽しみにしていないって思われてたのかな、なんて少し不安になった。
分からないけど、でも湊さんよりも楽しみにしていた自信がある…いや、分からないけど。
「圭、なんか高校の時よりクールになっちゃったからさ。気が向いてなかったらどうしようって思ってた」
安心するように言う湊さんの方を見ると、本当に嬉しそうに笑っているから俺も思わず笑顔になってしまう。
というか、クールになったってなんだ。
「ちょっと不安だったんだよね。まあ昔から愛情表現苦手なのは知ってるけどさ」
「苦手…とかじゃないです」
そんな言い方をされるとなんだか恥ずかしい。
苦手、というか、ただ羞恥心が邪魔をしてちゃんと出来ないだけ。
そんな理由すらも恥ずかしいから、絶対に湊さんには言わないけど。
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