高校時代

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 今日の放課後は部活見学だ。  入学式の勧誘地獄を思い出すと嫌気がさすが見学はしようと思っていた。  何にしようかと悩んでいたけど、弓道部が気になったから今日はとりあえず見学に行ってみようと思う。  中学はテニス部だったから全然ルールなんて知らないけど、まあ初心者くらいほかにいるだろう。 「今から部活見学?」  最後の授業が終わるなり話しかけてきたのは悠斗だ。  移動教室の時も一緒に行こうと言って2人で移動した。  1人で行って迷子になるのは嫌だったからと一緒に行ったのだ。 「うん」 「おー!いいな、どこ行くの?」 「弓道部。…一緒に行く?」  いいな、なんて言うから行きたいのかと思ってつい誘ってしまった。  何をやってるんだと思ったけれど悠斗は予想外にも大丈夫だと断ってくる。 「オレ、家でばあちゃんが喫茶店やってるんだけどさ。手伝いしないとだから」 「へえ…」 「あ、いつでも来てよ!また住所教えるからさ」 「また、ね」  果たして本当に行く日が来るのかは分からないが、まあいつか機会があればお邪魔しよう、そう思った。  荷物を指定のカバンに詰め込んで、俺は教室を出た。  外に出ると予想通りというか、色々な部活の先輩が1年生を勧誘しまくっていた。  これは巻き込まれるやつだと確信しつつ進むと、案の定先輩に捕まった。 「ねえ、君は何か部活入る予定?」 「…まあ、はい」 「ほんとに?じゃあさじゃあさ、バド部見に行かない?」 「いえ、自分は…」  弓道部に行くので、そう言おうとして隣からたくさんの先輩が入り込んできて言葉を遮られる。  やばい、完全に飲まれてる…。 「弓道部、どうですか?」  そう言われた途端顔を上げた。  袴を着た整った顔立ちの、多分α。  この学校はαや頭のいい一部のβの特進クラス、ほとんどがβの進学クラス、Ω専用の進学クラスがある。  この人は多分、特進だ。 「弓道部、行きたいんですけど」 「はあー!?抜けがけずるいぞ湊!」 「抜けがけじゃないでーす、ほら行こう!」  周りにいた先輩たちとそう話しながら、湊、そう呼ばれた彼は俺の手を引いた。  ふわりといい匂いがした、気がする。  弓道部の道場は少し離れたところにあって、そこには俺の他にも何人か1年生がいた。 「連れてきましたよ〜!」 「わ〜〜、1年生だ!!」  俺を見つけるとまた一段と騒がしくなる。  ゆっくり見てってね、そう言って俺をここまで連れてきてくれた先輩はまた来た道を戻って行った。
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