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少し動くだけで水がちゃぷちゃぷと波打つ。
相変わらず距離は近いままで、でも心拍数はだんだんと落ち着いてきた。
もしかして明日もこうするのかな、俺の心臓、あとの2日間持つかななんて湊さんが知ったら笑うだろう。
こうやって湊さんとまた過ごせるなんて夢のようで、まだ終わってないのにまた来たいと思った。
きっと湊さんとならどこへ行っても幸せだ。
「…湊さん」
俺が名前を呼んでみると湊さんはすぐに何?なんて返事をする。
「…また…また、どこか行きたいです」
そう、思ったことを自分で言うのはなんだけど珍しく言葉にしてみると、湊さんはくすっと笑った。
「まだ1日目だけどな」
「わ…かってますけど」
「まあそうだな。またどっか行こう、絶対」
湊さんの言葉に、そう言ってくれたことに嬉しくなった。
口角が自然と小さく上がる。
それに湊さんが気づいたかどうかは分からないけど、その代わりのチョーカー越しの項の辺りの唇をあててくる。
「けどその前に、俺は番たいかな」
番、その言葉にどきっとする。
俺だって出来ることなら今すぐなりたい…とは、言えない。
「次のヒート、いつだっけ?」
「…来月、です」
「じゃあそこで噛む…のは急すぎるか」
来月、そう言葉にしてもうそんな時期かと気づく。
確かに急だけど、でも俺はいつだって構わないし出来ることなら湊さんがよそ見をする前に自分の人になって欲しい。
「…いいですよ」
「え?」
「俺も…早く、なりたいから」
自分で言っていて恥ずかしくなって、俺は顔を見られたくないばかりに小さく俯く。
けど湊さんは俺を顔に優しく触れて、無理やり目を合わせるように向きを変えた。
「本当に?」
「…はい」
俺が頷くのとほぼ同時に俺の唇は塞がれる。
甘い雰囲気と暑さに飲まれておかしくなりそうだ。
「…そろそろ上がるか。のぼせそ〜」
「そうですね」
唇を離した途端そう言い出すから、俺は思わずくすっと笑って俺たちは風呂を出た。
その後部屋に運ばれてきた夕飯はなかなか豪勢なもので俺は圧倒されたけれど、残すのは勿体ないと思い2人で全て食べきった。
2日目は計画していた通り、動物園と水族館の一緒になった施設に行って、3日目は何も決めていなかったから旅館の人におすすめの場所を聞いてそこを観光した。
ずっと楽しくて、心地よくて、幸せな時間で、本当に帰るのが惜しかった。
また、一緒に行きたいな。
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