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 真雪をアパートに送り届け、ドラッグストアで天道ご指定のコンドームを買い、元スーパーの事務所に戻ると、天道は機嫌良くどこかの女の子と電話をしていた。今日は朝まで寝かせないぞとか言っている。  青葉がコンドームの箱を天道の足が乗っかっている事務机に置くと、天道はそれをつまんで間違っていないか確かめた。そして満足そうにうなずくと、青葉に親指を立ててサインした。  青葉は疲れたので建物の二階に上がった。  そこはスーパーの従業員の休憩室と第二倉庫になっており、十畳ほどの休憩室の方で青葉は寝泊まりしている。粗大ごみで拾った布団もあるし、十個ぐらいのパイプ椅子もある。机はないのだが、端に小さな洗面台とトイレもあるから快適だ。二階の倉庫には、たまに人が来て荷物を置いていったり、持っていったりする。そんなときは青葉も手伝わされるのだが、たぶんあれは違法なものに違いない。指紋がつかないように手袋をさせられるから、絶対にそうだ。  寝床は扉の壊れたロッカーを倒した上に布団を敷いて、ベッド代わりにしていた。床はネズミやゴキブリがうろうろしていることがあるから、ちょっとでも段差を作っておきたかった。靴もそのままで、アメリカンスタイルと言えば聞こえはいいが、単に下足のままの暮らしというだけだ。寝るときだけ靴を脱ぐ。  まだ夕方だったが、青葉は靴を脱いで布団に寝転んだ。薄い毛布をかぶって目を閉じる。  スマホがブーとうなって、青葉はポケットを探った。 『青葉って、石にこういう文字を彫ったりできる?』  真雪が謎の文字を送ってきていて、青葉はそれをチラリと見て目を閉じた。  石にもよるだろうよ。道具がありゃ、できるけどよ。  ちょっと眠らせてくれ。
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