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 真雪は物心ついたときから、母と旅をしていた。母はいろいろな町で占いをして生計を立てており、その町の大物に気に入られたら、その人の愛人になって暮らすことも多かったようだ。相手が独身だと結婚もした。数年後には離婚してまたその土地を離れた。真雪は小学校も何度か転校し、ほとんど友達もできないまま移動することもよくあった。引っ越しが嫌だと言っても一人で暮らせるわけもなく、真雪は母について移り歩くしかなかった。  中学生の時に母が事故死し、真雪は一人になった。他の親戚には会ったことがなく、当時、母を囲っていた男が母の代わりに面倒を見てやると言ったが、母の代わりに愛人になれという意味だったので真雪は逃げた。  青葉は真雪の行動について、ほとんど褒めないが、そのときに逃げたことだけは褒めてくれる。だから正しかったんだと真雪も思っている。  逃げて空腹で倒れそうだったときに、助けてくれたのが青葉だった。  青葉もまだ未成年だったが、年齢を偽って深夜の居酒屋でアルバイトをしており、ゴミを捨てるふりをして食べられるものを見繕っていた。真雪がゴミ箱のそばでうずくまっていたから、野良猫に餌をあげるみたいに枝豆をくれたのだった。  真雪はそのときの枝豆の美味しさに感動し、この世にこれ以上美味いものはないと思った。青葉は数日、真雪に廃棄食品をくれて、ある日、自分は明日はこの店のシフトに入っていないが大丈夫かと聞いた。真雪が涙ぐむと、明日はコンビニにいると言って、店の場所を教えてくれた。そして廃棄弁当をくれた。  いい奴だなと真雪は思った。  そのうち、青葉は寝るところや服の心配もしてくれて、自分が寝泊まりしているボロ屋を教えてくれた。青葉は起きている時間はほとんど働いていて、それは今でも同じようなものだが、真雪はちょっとでも自分も何かしようと思って、母を見て学んだ占いを始めた。  最初は全然儲からなかったが、それっぽい服や道具があったほうがいいと青葉が工夫してくれて、駅前でカードを並べるとたまに客が来た。警察やヤクザに追い払われることもあったが、占いが当たると噂になって少し稼ぐようになると、青葉のボスがやってきてピンハネするようになった。  青葉はちょっと抵抗しようとしてボコボコにされていて、真雪はピンハネぐらいいいじゃんと青葉に言った。青葉は不機嫌そうだったが、真雪としては暮らしていければ良かった。  そうやって、適当な占い師をして五年。  真雪は最近、ちょっとわかってきた気がする。母も私も、占いが天職だったということ。
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