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仕事の移動用に天道がくれたカローラは、どう見ても事故車だったが、修理して何とか使っている。最初は無免許で乗らされていたが、何年かして充分慣れた頃に天道が自動車試験場に行けと言って、一発合格しなかったら殺すと脅された。殺すと言われるのは挨拶みたいに日常に馴染んでいたので怯えはしなかったが、試験代を借金に上乗せされることのほうが面倒だった。どうせ正規の金額じゃなく、手数料が十倍ぐらいにふくらんだ額を記録するに違いないから。
青葉は交通ルールを勉強し、周りの違反だらけの大人たちに聞いてしっかり対策をして受け、一発合格した。だから今は無免許ではない。
真雪のアパートの前に行くと、彼女は暇そうに待っていた。
青葉が車を路地に入れると、真雪はスキップするように駆けてきて、助手席のドアを開いて乗り込んだ。
「これ」
青葉は彼女に紙で包んだ銅板を渡して車を出した。
「わぁ、やっぱりすごい」
真雪は銅板を見つめ、それからそっと指でなでた。
「青葉って、こういうの作るとき、何考えてるの?」
「はぁ? 何も。面倒臭ぇなとか」
そう言うと真雪は笑った。
「なのに、青葉の作るのって、すごく使いやすいんだよね。乗せやすいの」
「何を」
「うーん……力?」
真雪が首を捻りながら言うから、青葉は鼻で笑った。
「フォース、ってか」
あははと笑うと、真雪も笑った。
「このまま海とか行きてぇなぁ」
青葉が言うと、真雪は真顔でしかめ面をした。
「海? 寒いよ?」
そう言って、他のどこがいいか考え始める彼女を見て、青葉は高速に車を乗せた。
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