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 応急手当てを受けた後、青葉は真雪たちもいる警察署へと移送された。まだピークポートでの約束までには時間があり、釣りには間に合いそうだと青葉は思った。ただ、問題は真雪も天道も、青葉が警察と組んでいることを知ってしまったということだった。説明してわかってもらえる気はしなかったが、警察で殺されるってこともないだろうと、青葉はひとまず気持ちを落ち着かせた。 「大峰真雪さんと話をしたわ」  月浦は青葉が入れられていた聴取室に入ってくるなりファイルを置いて言った。目付きの悪い男の方も入ってくる。 「捜査に協力してもらうことになった。安全には配慮するから安心して」 「え、どういう協力ですか? あいつが表に立つのは絶対にやめてほしいんです」  青葉は焦って月浦を見た。  真雪と天道も一緒に警察に連行されてしまったことで、ある程度の覚悟はしていた。これは自分がミスしたせいだし、誰かのせいじゃない。ただ、真雪が囮になるとか、そういうことは避けたかった。 「彼女は協力的だったし、天道涼真もそれなりに協力的だった。あなたとは大違い。未来研究会の資料についても提供してもらう。警察だってバカじゃないのよ、狙われる危険性のある大峰さんを表に出すなんてことはしない」  良かった。青葉はひとまずホッとした。 「でもあの二人のおかげで、わからなかったことが埋まってきた。今日、これから会う相手との対応策について、少し話し合いましょう」  月浦が言い、青葉はうなずいた。それは必要だと思っていた。 「ピークポートで会う相手は、あなたのことは知ってるの? 顔や年齢、背格好を」 「向こうが? 知ってる。写真送ってたから。俺は相手を知らない」 「OK。じゃぁ仕方ないから連れて行く。でも余計な手出しはしないこと」 「しない。Ringの営業設定だから、名刺渡して、システムの説明をする。それから終わったら、警察が尾行するなり何なりで身元を突き止めたらいい」 「罠でない場合ね。向こうがまっとうな人間でない可能性だって高いってことはわかってる?」 「はい、わかってます」 「清掃の依頼人でしょう。事件の関係者である可能性も高い。相手はRingに依頼があるんじゃなくて大峰さんに用があるのかも。一緒に来るようにって指示はなかったの?」 「いや、それは断ったんです。鈴は持っていくって言いました。見たいって言うから」 「相手が急に態度を変えて、ナイフを突きつけるかもしれない。そういうときは、反抗せずに従って。必ず助けるから」  青葉はうなずいた。反抗なんて。しない。できない。 「店内と周囲には捜査員を配置しておくから、何かあったら従って。イヤホンも貸し出すから、万が一の場合は指示する。当たり障りのないことだけ話して、すぐ別れること。いい?」 「わかってます」 「本当にわかってるといいけど」  月浦はそう言って小さく息をついた。 「誰に襲われたの? 今回の件とは関係ないって天道が言ってたけど」  天道がそう言うならそうなんだろう。 「誰かはわかりません。親父があちこちに借金して死んでるんで、その関係かな」 「暴力団とかそういうもの?」 「ん……かもだし、違うかもです」 「適当に足を洗いなさい。でないと早死するわよ」  月浦が言い、青葉は肩をすくめた。
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