第1話 キッカケ

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 それは、とても単純な事だった。  この俺、"香住(かすみ) 章好(あきよし)"は、己の欲望に餓えていた。  「彼女欲しい···」  四畳一間、アパートの部屋の中。  窓を開け、風で靡く丸い蛍光灯の紐が右に左に揺れるのを、俺は脚を組み、両手を後頭部に敷いて寝転がって眺めていた。  現在、十九歳。  高校を卒業して以来、専門学校を中退してから派遣会社に所属。  今日は水曜日。  仕事のシフトは、今日は入っていない。  しかしながら、やることは無い。  やるべき事は有る筈なのだが、優先順位が思い浮かばない。  先ほど、午後二時に起床し、髭も剃らず、寝癖も直さず、気持ちばかり顔を濡らして洗ったつもりでいた。  歯みがき粉のチューブはプスンと下品な音を立てて底を突き、歯ブラシを咥えながらヤカンで湯を沸かし、朝食兼昼食のカップラーメンを食べたばかり。  食後に全世界のぼっち男子が羨む願望を呟いて天井を仰ぎ、今に至る。
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