2人が本棚に入れています
本棚に追加
それは、とても単純な事だった。
この俺、"香住 章好"は、己の欲望に餓えていた。
「彼女欲しい···」
四畳一間、アパートの部屋の中。
窓を開け、風で靡く丸い蛍光灯の紐が右に左に揺れるのを、俺は脚を組み、両手を後頭部に敷いて寝転がって眺めていた。
現在、十九歳。
高校を卒業して以来、専門学校を中退してから派遣会社に所属。
今日は水曜日。
仕事のシフトは、今日は入っていない。
しかしながら、やることは無い。
やるべき事は有る筈なのだが、優先順位が思い浮かばない。
先ほど、午後二時に起床し、髭も剃らず、寝癖も直さず、気持ちばかり顔を濡らして洗ったつもりでいた。
歯みがき粉のチューブはプスンと下品な音を立てて底を突き、歯ブラシを咥えながらヤカンで湯を沸かし、朝食兼昼食のカップラーメンを食べたばかり。
食後に全世界のぼっち男子が羨む願望を呟いて天井を仰ぎ、今に至る。
最初のコメントを投稿しよう!