第1話 キッカケ

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 そんな中、型落ちもいいとこ五年も使い古したスマホが布団の脇で震える。  無料の通話チャットアプリの独特なリズムでバイブする通知。  目には良いと云われる緑色が、今の俺には痛く感じる。  通知の主は、俺の唯一の女友達。  スマホがバイブしたと同様に、俺の心もバイブした。  高校時代、俺と部活が一緒だった同級生。  "澤田(さわだ) 美空(みく)"。  ベリーショートの栗毛色の髪がキュートで、華奢すぎる小柄な体とふっくらとした唇が印象的な少女だった。  高校卒業から暫し会っていなかったが、どういう風の吹きまわしだろうか。  とりあえず、メッセージを見てみよう。  ロック画面を解除し、ポップアップをタップ。  絵文字や顔文字など用いていない、素っ気も無ければ洒落っ気の無い文章を受信していた。  "(めし)奢れハゲ"……と。    
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