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「くっ……謀ったな、デラマン……」
しかし、偉丈夫で武芸に秀でたボッコスはそれしきで倒れなかった。デラマンの手を掴むと、寸でで握られたナイフの凶刃を止めたのだ。
「チッ…往生際の悪いヤツめ……」
「わ、若君っ! おのれ! 何をなさるか! この卑怯者があっ!」
また、そうして揉み合う二人を見ると、一瞬、驚きはしたものの、屈強な体躯のボッコスの従者はすぐさま腰に下げたレイピア(※細身の剣)を引き抜き、主人を救おうとデラマンめがけ斬りかかってゆく。
「しまっ…!」
一瞬にして形勢逆転。先に襲いかかったデラマンの方が、逆に剣の露と消えるかに思われた。
「ぐはっ…! …う、うぐ……」
ところが、断末魔の悲鳴をあげたのはデラマンではなく、レイピアを振り上げたボッコスの従者の方だった。
従者はそのままの姿勢で口から血を吹き出し、バタリと倒木のように地に倒れ伏してしまう……咄嗟に俺の投げた槍が、従者の胸を刺し貫いたのだ。
「……クソっ…パウロスもグルか……ならば、せめて貴様だけでも道づれだ……」
「うわっ…!」
が、まだ安心はできねえ。俺の存在に気づき、命の助からないことを悟ったボッコスは、頭はいいが腕っぷしの弱えデラマンを足払いして投げ倒すと、自身もナイフを抜いてデラマンと刺し違えようとする。
「させるかあっ!」
「くっ……!」
俺は慌てて駆け寄ると、従者に突き刺さった短槍をひっこ抜き、間髪入れずにボッコスの手にしたナイフを打ち払う。
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