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「死ねえっ! ボッコスぅぅぅっ、」
「うごっ……!」
ギン…! と甲高い金属音を響かせ、ナイフが宙をくるくると舞うのと、デラマンの突き出した刃がボッコスの腹を貫くのは同時だった。
「……ハァ……ハァ……助かったぜ兄貴……予想外にしぶとくて焦ったぜ……」
腹からも大量に血を流して倒れ込み、そのまま動かなくなるボッコスの傍ら、肩で息をするデラマンが額の汗を拭いながら礼を言う。
「俺も慌てたぜ。従者も存外に気骨のある野郎だ。思った以上に行動が素早かった……ま、ちいとばかし計画が狂ったが、目的は無事に果たせたぜ」
もともと俺も事が起きたら加勢する手筈だったのだが、デラマンが一撃目でヤツを仕留められなかったので、こんな冷や汗をかく羽目になっちまった……それでもボッコスを亡き者にし、唯一の目撃者である従者の口も塞いだので計画は成功だ。
「ああ。他に目撃者もいない。このことを知ってるのは俺達だけだ……さ、誰か来ない内に死体を埋めちまおう……」
それから俺達は二人の骸を森の中に埋めて隠し、なに食わぬ顔で居城へと戻り、平静を装って過ごした。
これで、親父の覚えめでたい我が異母弟ボッコスは、従者ともども謎の失踪を遂げてゆく知らずというわけだ。
だが、その翌朝のことである……。
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