2. 大学教授と花屋のバイト

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「残念……なんだって?」  器用に片眉だけ吊り上げたそいつは、ぎろりと俺のことを睨んできた。  こ、怖い。  綺麗な顔のやつが凄むとこんなに怖いのかぁ……、と俺は妙に感心してしまった。 こういうとこも、レンに似てるなって、チラッと恋人に顔が頭をよぎる。 ……と、いちごミルクの男の方が、 「こ、洸夜」 声を跳ね上げた。 (ん? なんだコイツ。さっきまで無表情だったのに、なんか今は……) 「冬木ぃ、何でこんなのに絡まれてんの? つーか、どういうつもり。こんな公衆の面前で堂々と浮気とか」  超絶イケメンは俺の股間と今まさに俺のポロシャツに指をかけていたいちごミルク男の手を交互に指差して凄んだ。  冬木と呼ばれたこの男がギョッと目を見開いて飛び上がる勢いで俺から離れる。  ヘビに睨まれた蛙って、こんな感じかなってくらい可哀想な動揺っぷりだ。  冬木は超絶イケメンだけしか見えていない様子で顔を赤くしたり青ざめたりと表情が忙しい。 さっきまでの無表情なヤツと同一人物か? って疑いたくなるほどの変貌ぶりにこっちは開いた口が塞がらない。 「こ、こ、ここ洸夜。どうして大学(ここ)にっ」  目の前で人が動揺してると、はたから見てる方は逆に冷静になれたりするじゃん。 その時の俺がそうで、自分が当事者だってことを最も簡単に忘れ、すっかり目の前の二人のイケメンのやり取りを耳をダンボに見物人の気分になっていたわけ。 コウヤが名前か苗字か知らんけど、冬木の問いにそいつは答えず、ズイ、と俺の方に綺麗な顔を向ける。  んで、こともあろうか俺の股間を握ってきやがった。  容赦ゼロ。潰す気満々でやられたこっちはたまったもんじゃない。 「っで!」  叫なき声混じりの情けない叫びをあげた俺を、近くを歩いていた学生たちが振り返る。  だが、コウヤのやってくれたは、コイツと冬木って二人のでかいメンズの背中に隠れて学生たちからは見えていない。  俺だけがおかしな人扱いで白い目で見られる。 「うわっ、何すんですかッ。やめてください」 って、冬木が引き剥がしてくれたおかげで理不尽な圧迫から免れた。 俺は大事なムスコちゃんを庇いながら尻餅をついた。  肉体的にも身体的にもダメージだ。 (コイツ、絶っ対ぇ悪魔だっ) 2022.10.18
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