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「なんでこんなの庇うんだ」
「だから、違いますって」
俺の頭の上で高身長イケメン二人が言い合いをする声が聞こえる。
そうこうするうちにまたあのいやらしい想像が視えてきた。
絡み合う肌色。目の前に立つ二人はぱっと見こんないやらしいことしそうにないのに。目を閉じて見える幻視に頭の芯が痺れてしまう。
なんだよ。考えるなよ。残念イケメン!
お前が考えてること、俺には全部視えてんだからな!
怒鳴ってやりたいが、俺の特性をバラしてもいいことないのはこれまでの人生で嫌というくらい味わっているから黙っておく。
そんなふうに俺が心の中でつぶやいている間にもコウヤって男の妄想はどんどん過激になっていき……。
見た目はおとぎ話の国から出てきた王子様って風情のくせして、あーんなことやこんなこと……おかげで萎えていたムスコがちょっぴり芯を持ち始めてるじゃないかぁ!
(もぉ、訳わからん。勘弁してくれヨォ)
俺は思わず顔を上げて、
「っ、コイツまた懲りずに」
ともらしていた。
俺の声に反応してこっちを向いたコウヤとバチっと視線が合う。
だが、俺を驚愕させたのは、冬木って男が何故か目元に情欲の赤を滲ませ恥じらう表情をしていたことで……。
吸い寄せられるように見てしまった冬木の股間はなんとなく膨らんで見え……。
思わずごくりと生唾を飲み込むと、
「見てんじゃねぇ、このエロ餓鬼が」
と、コウヤのゲンコツが飛んでくる。俺は身を捻ってよけた。
「やめ……やめろ、洸夜っ」
冬木が鋭く静止するのと、
「あっ、見つけた。トーマっ」
嬉々とした俺の恋人の声が背後から聞こえたのは、ほぼ同時だった……。
その後、冬木の必死の説明で無罪放免となった俺は、手を引かれるまま入った教授室でレンに泣きついて慰めてもらっている。
「あいつら怖い。もぉヤダァ」
入った時にすぐカーテンを閉めたから、他人から見られる心配がないのをいいことに、レンに抱きつく。
首筋に顔をうずめてズビズビ鼻を鳴らす俺の後頭部をレンの手が優しく撫でてくれた。
「よしよし。大変だったね」
「ヒィ、クッ」
とまだしゃくり上げていると、レンがもう片方の手で俺の股間をサワサワと撫でさすってきた。
びっくりして涙が止まった俺の顔を覗き込んだ大学教授様がチュッとキスを仕掛けてくる。
「他人のおかしな妄想を垣間見ただけでこんなに膨らませて。君のココが素直でイケナイ子なのは知っていたけど。ふふっ、可愛いね。どれ、ちゃんと見せてごらん……」
喋っている途中から変態オヤジの地を丸出しにしたレンが鮮やかな手つきで俺の衣服を剥いてゆく。
「ちょ、待って。まだ俺仕事がっ」
「大丈夫、大丈夫……」
あっという間に散らした白を大きな手で受け止めた教授様が、ニヤリと笑って俺のでヌルついている指をずぶりと後ろに刺してきた。
実は二週間ぶり……のその刺激に、再び軽くイってしまう。
それで火がついちゃって……。
まぁ……なるたけ手早く済ませてはくれたけどさ。
*
そして、その日の夜。
仕事から帰ると、すでに俺の部屋に合鍵で入っていたレンが出迎えてくれて、一緒に夕飯を食べて風呂に入って……。
ベッドの中恋人の腕の中にすっぽり閉じ込められ、うとうとしていた俺の脳裏に昼間の冬木の顔がふと浮かんだ。
寝る前に思い浮かぶってのは、やっぱり気にしていたからで……。
あの表情。そしてあの反応——。
(あいつ、ぜってぇ視えてただろ)
って、こと。
まさか、まさかだけどさ。
俺と同じように、他人の考えてることが視えちゃう人間がいるとは。
まぁ、同病相憐むとか俺のシュミじゃないからわざわざ声かけないけどねっ。
つぅか、こっちはしがない花屋のバイトで、あっちは将来有望な有名大学の学生様なんだから、今後絡む未来なんてありえないってな。
薄く笑った俺がそう決めつけて、巻きつく恋人の腕にそっと手を重ね目をつむったころ……。
*
「どうしたんです? 洸夜」
「いや、別に」
「まだ、昼間のこと怒ってる?」
「そんなんじゃない」
違う場所、違う部屋で肌を合わせるイケメン二人の片方が、
(あいつ……視えてた? 冬木とおんなじで)
と唇をかみしめ眉を寄せていただなんて。
そんなこと俺には知りようがないことだし、知っても仕方ないことだった……。
〈了〉
2022.1020
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