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 流れ星を見たことはありますか。私は今までに何回か見たことがあります。流れ星は青白い光が素敵。でも、どこか不思議なところもありますよね。私は流れ星を見つける度に必ずお願い事をしています。誰にでも叶えたいことってありますよね。もともと子供のころから星を見ることが好きでした。特に大好きなのは月。なぜだと思いますか。それは私の名前が「望月」だから。これは両親に感謝するしかありません。ちなみに「望月」には満月という意味があるといいます。 私の両親は田舎暮らしが好きなこともあり町から遠く離れた山の奥に住んでいます。父と母は長い間、不妊で悩んでいましたが、高齢になってやっと妊娠し私が産まれたらしいです。それもお母さんは私がお腹の中にいたとき、たまたま竹林を歩いていたら急に産気づいて産まれたというのです。不思議ですよね。とにかく両親は喜んで大切に育ててくれました。お父さんは私が産まれた後、なぜか宝くじが何度も当たり、お金には困っていませんでした。だから、仕事にも行かず毎日のように山の中にいって草刈りをしています。お母さんもレトロというのか環境問題の意識高い系というのか、近くの川で洗濯をしています。それも手でゴシゴシと洗うのです。イマドキ古風な人ですよね。お母さんは自分のことを「SDGSの鏡」といっていますが、結局は川の水を汚しているのだから同じことだと私は思っています。これは、お母さんには内緒ですよ。  子供のころからお父さんに欲しい物をお願いすると、ほとんど何でも買ってくれました。それに大学も東京の有名私立大学に行かせてくれました。大学時代は渋谷や原宿に出かけて友達とよく遊んでいました。そんなとき、友だちの推薦でいくつかのミスコンテストに出場して、何回も優勝しました。ちょっと自慢かな。  そんなこともあって、大学を卒業すると、いくつもお見合いのお話しをいただきました。お相手は有名政治家のお孫さんや財閥の御曹司ばかり。相手の立場もあるのでしかたなく何人かとお会いましたが、ピンとくるような人はいませんでした。一番驚いたのは皇室からお見合いのお話まであったこと。さすがに困ってしまいました。どうしても断りきれないときは、とんでもない無理な条件を出してやんわりとお断りしました。そこはキッパリと。  どうして、そんないいお話を断るのかといいますと、私には子供の頃からの大きな夢があるのです。それは、宇宙飛行士になること。宇宙飛行士になって月に行きたいのです。大好きな月にどうしても行ってみたいのです。あのアポロ計画のように。だから今でも就職しないで宇宙飛行士を目指し勉強しています。何度も受験しているのですが、なぜか最終選考で落とされてしまいます。それが悔しくて。やっぱり女性だからダメなのでしょうか。日本人だから無理なのでしょうか。それでも日本人女性の宇宙飛行士は今までに何人もいます。だから、あきらめません。負けるな私。がんばれ自分。  先日も宇宙飛行士の最終選考がありました。かなり自信があったのですが、いまだに連絡がありません。 「もう宇宙飛行士は無理なのかな」 かなりポジティブな私も今回ばかりは落ち込んでいました。悲しくて夜空を見上げて涙を流していました。  すると、その時、私の部屋のドアが開いたのです。 「元気出しなさいよ」  お母さんが私の大好きな月見バーガーを持ってきてくれました。 「ありがとう、お母さん。元気が出るわ」 嬉しくて月見バーガーをバクバク食べていました。 「あなたが納得するまで、挑戦すればいいわよ」 お母さんはやさしく微笑んで見守ってくれます。 「あ、それと何か郵便が届いていたわよ」  お母さんは大きくて分厚い封筒を持っていました。それは宇宙航空研究開発機構からの郵便でした。封筒には 「望月かぐや様 重要なお知らせ」と赤い字で大きく書かれてあります。さっそくリビングに移動してその封筒を家族三人で開けてみることにしました。ちょうどその時、リビングのテレビでは二十五年前に起きた山中で発生した幼女行方不明事件についての記者会見を放送していました。 「姫ちゃん。帰ってきて」  悲しそうに泣き叫ぶ大月さんというご夫婦がテレビに写っていました。                                      (了)
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